『美文書』付録 J 章 errata

このところトラブルプロジェクトの対応のため本業に責呵まれており,12 月中旬からこのかた二日しか休んでいなかった。久しぶりの三日間の完徹などもあり,今日はとうとうダウンしてしまった。それでも 16 時頃まで寝て,少し気分がよくなったので,『美文書』付録J章(多言語関連) 担当分の errata を投稿した。

奥村晴彦先生の『改訂第 4 版 LaTeX2e 美文書作成入門』は昨年 12 月 12 日に出版された。第 4 版では,永田先生が第 3 版でお書きになった多言語に関する付録 J 章を改訂することになり,TeX Wiki Q and A 多言語 TeX 関連の話題でいつも示唆的なご発言をされる I 氏,K 氏,永田先生のお取り計らいで私にも原稿作成の協力依頼があったのである。主にロシア語関連の解説のほか,インプットエンコーディング,Unicode 事情について担当した。その筋の権威者でもないし,筆が立つわけでもないので,はじめは辞退申し上げたのだけれど,私ができる範囲でやってよろしいということもあり,お受けしたのだった。

書籍の出版は私にとってはじめてであり,TeX を使った入稿,版面設計,組版過程でのトラブルシュートなどプロの現場のノウハウを一部なりとも知ることができて,とてもよい経験になった。私は METAFONT による PK フォントも結構好きなのだが,イメージセッターに掛らないなどの問題があり,Type1 フォントに TeX ユーザの皆さんが拘る理由を今回はじめて理解できた。

記述のバグや不正確な部分の残存は免れず,サポートページで errata としてこのあたりをフォローアップすることになったのだけれども,このところの激務に在って,私はまったく貢献できないでいたのである。K 氏,I 氏が私の担当分についてもサポートページを更新してくれていて,バグに類する部分はすでに反映されていた。今日私は,『美文書』原稿作成で使用したフォントアーカイブへのリンクや,数式モードでのキリル文字の利用方法サンプルなど,補足的な事項を書き込んだ。

『改訂第 4 版 LaTeX2e 美文書作成入門』は入門書でありながら,画像の取り扱いなど TeX 周辺アプリケーションの解説にも手抜かりがなく,出版の現場での活用などプロフェショナルの領域までカバーする,おそらく日本でもっとも総合的で,かつ親しまれている LaTeX 本である。改訂を何度も重ねていることそれ自体が本書の有用性と良心とを証明している。第 3 版で永田先生の多言語解説が追加されてからは,多言語 TeX の基礎について解説した数少ない書籍ともなっている。あとマクロの解説が拡充されれば日本で最強の LaTeX 本になるはずであるが,入門書ということもありこのテーマは意図的に別の解説本に譲っているのであろう。