対韓国輸出規制強化

日本の経産省が 7/4 から韓国に対しフッ化水素などの三品目の輸出管理について規制を強化した。加えてパブリックコメントを経た上で,8/1 から韓国を輸出規制ホワイト国から除外することも発表した。

これに関する 6/30 の産經新聞の報道から,韓国では蜂の巣をつついたように大騒ぎになっている。G20 で韓国の存在感まるでなし,トランプがキムジョンウンと電撃会談,なんてのも吹き飛ぶ勢いである。指定三品目の供給阻害が,韓国の主要産業である半導体,有機 EL ディスプレイの製造に決定的な悪影響を及ぼし,この結果,ただでさえ弱っている韓国経済が破綻するかもしれないからである。

朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる徴用工問題)の韓国最高裁判決とその後の韓国政府の放置に対する経済制裁と韓国では捉えられているが,日本政府は,そうではなく,韓国の信用が低下したことによる,輸出規制優遇対象からの除外だ,と説明している。

僕自身,韓国最高裁判決に基づく日本企業の資産差し押さえが現金化され日本企業が実質的に損害を被ってはじめて日本政府が報復に打って出るというふうに報道から知らされていたこともあり,現金化の前でのこの経産省の措置はたいへん意外に思われた。日本政府には,単独で他国に対して経済制裁をなす法的根拠も,根性もない,と思っていたからである。

たしかに,この輸出規制強化は韓国を優遇対象から外すというだけで,これがすなわち禁輸に直結するわけでもなくきちんと申請・受査すれば輸出は可能なわけなので,制裁というには甘すぎる話ではあるけれども,韓国の狂騒的反応をみていると恐るべき効果を発揮しているようにも思われる。

経産省の発表によれば,この措置をとった理由は「不適切な事案が発生した」こと。ところが,具体的に韓国の行った何が不適切な事案なのか,まったく説明していない。別の報道によれば,経産省が具体的事案の説明を行わないのは「守秘義務があるから」だそうである。そんなの理由にできるか?

じつは,僕はこの思わせぶり,「俺たちは知ってるぜ」風の物言いにいちばん「日本政府の怖さ」を感じるところなんである。ひと月半前くらいに産經の zakzak で,韓国に輸出した戦略物資がイランに横流しされていた可能性について記事が出ていたのだが,これを読んだときは,ま,産經なんで韓国をディスる記事は当たり前か,程度にしか捉えなかった。しかし,ここにきて,この手の「事案」について経産省が確かな証拠を押さえていて,今後の動向をみながら次なるカードとして隠しもっているのかもしれない,ということに思い至ると,日本政府も恐ろしい戦略をもって韓国に戦いを挑んだものだと考えさせられるのだ。

日本から韓国に輸出されたフッ化水素がイランや北朝鮮のウラン濃縮のために横流しされていたというような事実が仮に明らかになると,米国を烈火のごとく怒らせるのは間違いなく,韓国は日本に限定されず米国からも制裁を受ける事態になりかねない。そもそも情報オンチの日本政府であってみれば,じつは米国からの情報に基づいて米国と十分に議論した上で韓国を絞めるこの措置に至った,と考えるほうが腑に落ちるところがある。

外務省は相手国と高級ワインを飲んで宴会をしているだけなのだが,経産省は違うようである。日本政府は韓国に対して本当に怒っている。徹底的に韓国ムンジェイン政権を締め上げるつもりのようである。これまで日本政府が産業を直撃しかねないような措置を韓国にしたことがあるのか?と考えるにつけ,韓国はいま恐れおののいているのではないかと,それゆえに狂騒的に日本に噛み付いているのではないかと思う。

韓国は日本の「報復」に対し相応の報復をやると息巻いている。何ができるのか? WTO に訴える? ホワイト国でない他の国と同じ扱いにするのがどうして自由貿易原理や国際法の違反なのだろうか? しかも,WTO に訴えると日本に「不適切な事案」の具体的問題を明らかにされ,逆に自分の首を絞めるのではなかろうか。日本に対して同様に「輸出制限」をかける? 制限されて日本が困る代替不可の品物なんて韓国にあるのか? 関税を上乗せする? それこそ WTO 違反ではないか。日本製品不買? 一般消費者にはムリムリ。日本への旅行自粛? んー…,その程度? 日本への報復として韓国にできることは,せいぜい日本の「不当な措置」を泣き喚いて国際社会に吹き込むことくらいに思われる。

これから日韓の面白いチキンレースがみられそうである。ま,中二病韓国がへこみ泣き喚き吠えまくるのをみるのは一興ではあるが,ここで他人の不幸はどうでもよくて,願わくば,これを機に,わが国が韓国に盗まれた技術と市場を奪い返し,いま再び「朝鮮特需」にあやからんことを。あくまで日本の利益になるように日本政府にはお願いしたいものである。

8/10 付記:ここで「輸出規制強化」と書いているが,経産省は「規制ではなく管理の強化」と明言している。他のホワイト国以外への国と管理を同じにするということなので,たしかに「規制」ではなく,そもそも「禁輸」でもなく,緩い「管理」からきつい「管理」に変更するということに過ぎない。朝日や毎日は政府がいくら口を酸っぱくして説明しても,いまだに「規制」と書いている。朝日や毎日みたいな新聞と同じになりたくないけれども,ま,このままにしておこう。