最近の新人は…

米国の有名な CRM ソリューションベンダーである Salesforce の日本法人サイトが,『「最近の新人は…」と嘆くあなたに。〜平成生まれのインサイトを引き出す6つの処方箋〜』と題する eBook を配布していた。なかなか興味深い分析をしていた。平成生まれ・ゆとり世代の6つのタイプとは次。

  1. 詳細指示待ち型(「ふつうはやるだろと,と言われましても。では,ふつうって何ですか?」)
  2. トライしない型(「楽に成果を出せるのはこっちじゃないですか」)
  3. 理想が中の中型(「クビにさえならなければ,それ以上はいいですよ」)
  4. みんな一緒型(「部長もやっていますから,ぼくも同じようにやりますね」)
  5. ぼくだけ型(「全体ミーティングって意味ありますか? やることは各自違いますよね」)
  6. ミレニアルと認識型(「モーレツとか古すぎますよ。どうして昭和のやり方を押しつけるんですか?」)

この分析が正しいとすれば,俺からすれば,彼らは弱っちいくせに自分勝手な最低な世代に見える。「最近の新人」とまがりなりにも仕事で付き合っている俺としては,この分析が「そうだそうだ」という手放しの共感を得るとはあまり思えないのだけれども,傾向としては納得できる点がないわけではない。また「ゆとり世代」について見聞きする評判で,よいものに巡り会った試しがないのは俺だけではないと思う。

「自社のみならず,顧客も同じ世代を抱えている。そして,そのうち間違いなくこの世代が未来を担う」というようなことをきちんと指摘する Salesforce の視点は,さすがトップ CRM ソリューションを提供する企業のものだと感心した。たしかに,昔がどうのこうの言って愚痴をこぼすだけでは物事は解決しないし,一見頼りなさそうに見える部下もうまく使っていかないと身が持たない。

しかし,ここでちょっと現代の有名人について考えてみる。デビューから負けなしの中学生将棋士・藤井聡太くん,卓球の「みうみま」女子高生ペア(平野美宇さんと伊藤美誠さん),15 歳で U-20 サッカー日本代表に選出された天才・久保建英くんなど,昭和の俺たちが想像もできなかった瞠目すべき若い世界的才能を,平成という時代は輩出している。これは明らかだ。考えてみれば俺たちのほうがよっぽど「変われないダメ世代」と呼ばれてもしようがないように思われる。

共謀罪に戦前の治安維持法の亡霊を見,集団的自衛権を認めた安保法案を「戦争法案」と極め付け,憲法に自衛隊の存在を規定する改憲案を「右翼的」と極め付けるのは,多く年寄りばかりである。朝日新聞,毎日新聞の改憲世論調査では反対者が優勢である。ところが,Yahoo! などのネット投票では圧倒的に改憲支持が多い。これは,いったいどういうことか。新聞を読んでいるのが,さらに新聞に書いてあることを鵜呑みにしているのが,これまで己の要求が政治によって聞き入れられて来た,優しく騙されやすい年寄りばかりだからである。年寄りによって就職難,貧困に馴らさせられた平成生まれの若者のほうが,ネットに集ってホンネを晒し,現実をよく見据えている。

テロの脅威,核開発による北朝鮮の非理性的脅迫,軍事力・経済力を背景とした中国による国境抑圧が誰の眼にも明らかで,「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」(日本国憲法前文)できた終戦直後とは大きく情勢が変わってしまった。現実的に存在している自衛隊の孕む憲法違反を「これまでのようになあなあと」放置するわけにもいかない。なのにわが国は実効的対策がほとんど打てない。

というのも,「平和と人権を脅かすもの」に対抗するためのルールの見直しそのものを平和と人権を脅かす行為として糾弾するような思考が,ある程度教育のある人々に根強く存在しているからである。あまりにも多大だった戦禍の経験から二度と戦争はしない,不当な官権による抑圧のない自由な社会を創造すべきである,とする健全な考え方は,一方で,戦後の七十年の間に戦争と官権による取り締まりの問題について,政権のアクションを否定的に捉えようとする傾向を生んだ。有事と権力執行を懐疑的に眺める,戦後の平和のうちに裏切られることなく培われた凝り固まった考え。これは,わが国の知識人,インテリも皆,これに同調していれば知識人,インテリたる尊厳が保障されるくらい,強力な立場になってしまっている。

この固定観念を変えるのは一大転換を要する。そもそも,年寄りにとって変化自体が悪である。共謀罪,新安保法案について,「きちんとした議論なしに与党が数の論理で強硬採決した!」と騒ぐ野党こそ,この固定観念ゆえに「反対のための反対」に終始するばかりで,きちんとした議論を許さない張本人ではなかろうか。共謀罪だって,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(TOC 条約)」(*)を批准するために国内法として整備すべき必須要件として,2000 年以来国政の場で議論されては潰されて来たものであって,しかも野党の反対のための反対がその要因だったことを鑑みるに,「十分な議論がない」なんてのはまったくもってなに馬鹿なことを言っているのかと呆れるわけである。こんなことだから,今般のように,与党の決めたままに法改正をやられるのである。

(*)民進党の小西ひろゆき参議院議員は「共謀罪が成立すると,亡命を覚悟する」などとなんとも愚かなことを軽いノリで言ってくれている。TOC 条約を批准していないのは日本のほか,ソマリア,コンゴ共和国などごくごく一部の国で,つまりは共謀罪法案(コンスピラシーを罪とする法案)の存在は世界標準なんである。小西議員はソマリアにでも亡命するのだろうか? 本気か? 言葉に責任を持てるのか? ホント,ふざけている。

こうして,世界最強の米国との安全保障条約で守られて来たわが国の「空気のように当たり前の戦後の平和」のなかで,危機という観念が拭われ,予定調和にならされてしまった,凝り固まった「変われない世代」は,まさに俺たちではなかろうか。若者がどうのこうの言う前に己を変えないと,国の存続すら危ぶまれる事態になっている。

そのうち北朝鮮が核実験に踏み切り,米国が先制攻撃をするかも知れない。そうなると,北朝鮮は反撃として米国の提灯持ちたる日本を核攻撃する(北朝鮮はハッキリとそのような声明を出している)。日本はパニックになる。東日本大震災とは異なり,この被害は人的なもので,明確な恨む相手がいる。そのとき日本はとてつもない凶暴性を表す(震災に対しては歴史的に社会・人心の準備があったのに対し,有事に対する準備のない日本人に理性的な振舞いは不可能だ)のではないかと俺は心配する。その前に命を失っている可能性のほうが高いのだが。