加計学園問題 ― 官僚と官邸のせめぎ合い

森友学園問題がそのスジの悪さゆえにフェードアウトして,ようやく北朝鮮問題が騒がれはじめたと思いきや,対北朝鮮先制攻撃の米国の虚勢はやはり虚勢であったことに国民がほっとしたのか,今度は加計学園問題。やっぱり民進党が政権の足を引っ張ろうとやっきになっているようである。

この事案,なにが問題なのかさっぱり理解できないところに,知れば知るほど日本の国政事情,マスメディアのマヌケさ加減に呆れるばかりになった。でも,森友学園問題と同様に,国政を騒がせるにはあまりにくだらない些事で,アホらしく思われるにつけ,下掛かったスキャンダルも絡んで大衆の下品な興味を大いに惹きつつもあり,同様に下品な俺の受け止めをちょっとしたためておきたくなった。

獣医学部の新設を巡って安倍総理が文科省に圧力をかけたのではないか,というのが問題の焦点のようである。「官邸のご意向により」云々という出所のわからない怪文書が出て来て,それを前川・前事務次官がホンモノの文科省内部文書だと証言し,一方で菅官房長官が前川氏に対する人格攻撃ともとれる怒りの会見をなすに及んで,安倍政権と,それにウラミを持つ民進党,朝日新聞,元高級官僚との泥仕合となりつつある。

「官邸のご意向」云々の文書が仮にホンモノだったとしても,内容は文科省のせんずりでしかない。官邸側の資料と照合できないと文科省の勝手な「デッチ上げ」でしかない可能性もある。だから,ホンモノかどうかなんてそもそもどうでもよいことである。俺たちだって会議の議事録に書いた顧客承認事実の記載内容が「証拠」として認められるのは,顧客側が議事録を承認するハンコが押されて初めて成立するのであって,今般の文科省の資料はそれがないために「証拠」を構成しない。これは社会人なら誰だってわかるルールである。よって,これをもって詰め寄るのは,民進党の単なる言いがかりでしかない。ちゃんと「証拠」を持って来い。

仮にこの怪文書がホンモノで「官邸のご意向」が加計学園関連大学の獣医学部新設に少なからざる影響を与えていたとしても,本事案は国家戦略特別区域に関わる文科省の最終判断で決まったことであり,手続き上なんの違法性もないのだから(もちろん,官邸のご意向の前段階で贈収賄があったというなら別問題であるけれども),こんな些末なことでどうして国会が機能不全に陥るのか,朝日と讀賣が事実関係の相反する記事で煽るのか,辞めた元高級官僚がしゃしゃり出てくるのか,相変わらず日本の政治は暢気だなというのが俺の感想。

どんな些細なことでも政治の正義に反する場合,そりゃ追及すべきだろう,というのはわからないでもないが,こんな泥仕合は国会を空転させるだけで,いい加減にしろといいたくなる(観ていておもろいんだが)。もともと加計学園獣医学部新設は民主党政権が推進していた案件だったというのだから,民進党っていったいなにがやりたいのかと思わせてくれる。政権時代に消費増税を自分で決めておいて,いまになって政権を批判するネタに使っているのとまったく同じなのである。これだから信用できないのである。

ところで,前川氏という前文科省事務次官は出会いバーに出入りしてどうもいかがわしいことをやっていた,なんてことが,彼の会見とほぼ同時に暴露された。これも,なんでこうもタイミングよく政権にとって攻撃材料となるネタが出て来るのか,と気味が悪くなる。「出会いバーには確かに行ったが,貧困女性の実地調査のため」とは前川氏本人の言い訳だが,「ソープランドに行きはしたけど風呂に入っただけ」というのと同じくらいのマヌケである。失笑するしかない。「貧困女性」ということばも癇に障る。また,そもそも,審議官ともあろう官僚が自分の手を動かして調査するなんてありえないだろう。さらに,本当に調査が目的だったのなら,文科省は正式に当該店舗から事前に承諾を得ていたはずではなかろうか。さもなければ,文科省は警察や国税庁のように「潜入調査」のようなことを行う権限でももっているというのか? なのに,朝日新聞なんかは彼が本当に貧困対策に熱心だったなんてふざけた(マヌケな)前川ヨイショをまことしやかにヌケヌケとやる。一方で,安倍シンパの讀賣新聞は,買春性癖ありありのスケベ元高級官僚との人格攻撃に余念がない。おもろい,おもろい。もっとやれー。朝日といい,讀賣といい,なんと下品なことか。こういうのを面白がる俺は下品でもよいが,日本の二大新聞社がこんなんでよいのだろうか。

前川氏は今年一月,文科省の天下り問題で辞職した人である。菅官房長官は会見で,責任を取らずに事務次官職に恋々としてしがみつき怒りの世論が沸騰するに及んでイヤイヤ職を去ったいい加減な野郎だと,珍しく怒りを露にして前川氏を貶めていた。官邸が怒り心頭に発しているのがありありとわかった。そして出会いバーで女の子を漁っていたスケベ野郎という,加計学園問題とはなんの関係もない人格攻撃ネタを暴露して(おそらく文科省内の誰かのチクリを利用して讀賣新聞にリークしたのは政権そのものではなかろうか?)問題を混ぜっ返している。政権も下品極まりない。

加計学園問題の核心は「官邸のご意向」にある。「官邸のご意向」が官僚の「忖度」を促し政策実行に影響を与えているのではないかということにある。2014 年,内閣人事局が設置され,高級官僚の人事権を内閣,すなわち,政治家が握るようになり,よって,もとより出世至上主義的な官僚は官僚として出世したいなら政権,官邸の気に入ることをしなければならなくなり,よって事務次官の歓心を買うことよりもむしろ「官邸のご意向」に従うようになった ― こういうかつて民主党が偉そうに叫んで果たせなかった「政治主導」が実現されつつあるということが,本事案の背景にある。その病的な現れである。

それでもやはり,事務次官は大臣の次に偉いわけで「官邸のご意向」に対してかつての前川・事務次官は文科省官僚としての判断を下してもよかったはずである。前川氏の「文書はホンモノ」との言は,俺的には「僕は官邸のご意向に諾々と従いました」という責任放棄にしか受け取れない。菅官房長官も「文書がホンモノというのなら,どうしてそのときに意見しなかったのか」と,職務に対する前川氏の不作為を非難した。至極当然で,俺もその通りだと思う。

獣医学部は五十年以上も新設されていなかったそうである。要するに,医師と医師会の問題と同様,獣医が増えると既得権益が薄まるので獣医師会が反対して来たそうである。そして,文科省もその既得権益に乗っかって来たわけである。前川・前事務次官はその既得権益を守ろうとする立場にいて頑として獣医学部新設を認可して来なかったが,戦略特区に絡んで「官邸のご意向」に逆らえなかった。そんなところへ,天下り問題で実質的にクビになるという事態になり,いっそう政権に対するウラミを募らせ,今回のカミングアウトに至った。そういう図式に見える。

なんのことはない,官僚の既得権益への執着と「官邸のご意向」とのせめぎ合い,というのが加計学園問題の本質ということになる。ホント,くだらねえ。こんなことで国会審議がマヒする。朝日新聞陣営(毎日,東京)と讀賣陣営(産經)が下品な大騒ぎをする。泥仕合で時間を浪費する。やっぱり日本は平和である。金正恩,習近平,文在寅は,あまりに羨ましくてさぞかし大笑いしていることだろう。

それにしても,この前川という男,現役のときは既得権益を背景に事務次官にまでなり,天下り問題でクビ同然で辞めさせられたのに退職金を手にした上で政府に反旗を翻す。どれだけ国民に対して義理を欠く野郎なのかと俺は呆れる。買春したくらいどうってことはないと俺は思うのだけれども,元高級官僚が文科省内の秘密文書に関して朝日新聞と結託して政権攻撃に加担している姿は,一般社会人の常識の範囲でみるに,最低である。たった一人で国に対峙して勇敢だ? バカか。マスコミと民進党を味方にして,国の恩を仇で返す自己中心的国賊としか,俺の眼には映らない。そのうち秘密保護法違反でも,国家公務員法違反でも,でっち上げられて,ブタ箱に行くのではないかと思う。官邸,霞ヶ関を敵に回したいま,その行方がおもろーなりそう,ってなもんや。本事案,かくしてどうしようもなく下品である。