なぞなぞ

閑だ,閑だ,閑だ。何か面白いことはないものか。友人に出して受けたのでここにも。

* * *

〔問い〕
俺は女の家を出て,巫山の夢を反芻しながら,一度たりとも方角を違えず,一ミリたりと狂わず,正確に,真南に五十キロ歩いた。そして,次に,やはり一度たりとも方角を違えず,一ミリたりと狂わず,正確に,真東に五十キロ歩いた。さらに,一度たりとも方角を違えず,一ミリたりと狂わず,正確に,今度は真北に五十キロ歩いた。するとなんと再び女の家の前にいた。どうしてこんなことが起きるのか?

〔答え〕
女の家は北極点にあったのだ。

* * *

〔問い〕
真直ぐ向こうの方から,見知らぬ人がこちらに歩いて来て,丁重に会釈した。すれ違いざま,俺も丁重に会釈を返した。そのまま俺たちは振り返ることもなく,それぞれ正反対の方向に,再び真直ぐ歩いた。しばらく歩くうち,真直ぐ向こうの方から,先ほど見た人がこちらに歩いて来て,再び丁重に会釈した。俺も再び丁重に会釈を返した。いったいどういうことなのか?

〔答え〕
俺たちは地球を一回りして再会したのだ。

* * *

〔問い〕
地球一周の距離を正確にミリで答えよ。

〔答え〕
40,000,000,000ミリ。メートル法は地球が基準である。

* * *

最後に,竹中郁の詩をひとつ。

 見しらぬ人の
 会釈をうけて
 こちらも丁重に会釈をかえした
 
 二人のあいだを
 ここちよい風がふいた
 
 二人は正反対の方向へあるいていった
 地球を一廻りして
 また出会うつもりの足どりだった
『日本の詩歌 25 北川冬彦・安西冬衛・北園克衛・春山行夫・竹中郁』
中公文庫,昭和 56 年刊,403 頁。
日本の詩歌 (25) 北川冬彦 安西冬衛 北園克衛 春山行夫 竹中 郁 (中公文庫)
北川冬彦・安西冬衛・北園克衛・春山行夫・竹中郁
中央公論新社