「考えておく」の西東

「ご依頼の件は考えておきます」— こう言われたとき,東京(広く東日本)と大阪(同様に西日本)ではまったく受け取りが違うのではないだろうか。東京人は「考えます」「検討します」というのを,前向きに,実際のところは「わかりました,そうします」という発言とほぼ等価であると受け取る。これに対し,大阪人は「アホか,そんなことやるわけないやろ」との明確な意思表示であると捉える。受け取り方がまったく逆なんである。これは,東京でも大阪でも暮らした俺の経験から来る確信である。西と東ではエスカレータで止まる列と歩く列が左右逆であるのに似た,日本の面白い現象かと思う。

昨年十二月の「最終的・不可逆的従軍慰安婦問題解決」の日韓合意を受けた日韓関係修復の流れから(と言っても,その後,合意事項にない謝罪の手紙を安倍首相に要請するなど,韓国政府は相も変わらずムービング・ゴールポストぶりをやらかしてくれているわけだけど),いま日韓通貨スワップ再開が日本政府において「検討」されている。俺自身はこう考える。国家元首が竹島に上陸をした上にわが皇国の象徴である陛下を侮辱するような国家はわが国の敵であり,そういう敵に対してはいかなる協力も拒否すべきであり,従って,韓国救済のためにしかならない通貨スワップ締結をなすべきではない。この国に対しては,わが国益の成り立つ範囲で,一度徹底的に絞めたほうがよい。

それはさておき,昨年二月にスワップ打ち切りとなったあと,国会の予算委員会において麻生太郎財務大臣は質問者に対して,「韓国から要請があったら検討する」と答弁していた。外貨準備に常に不安を抱え,いま現在経済が非常に厳しい韓国が,一度は「もういらん」と豪語して断っておきながら,メンツを捨てて日本に通貨スワップ再開を打診した,とされている。日本政府としては「要請があったら検討する」まさにその状況にあるわけだ。

麻生さんの「検討する」の真意は東京人のものか,大阪人のものか,というのが俺の一等最初に忖度した点である。麻生さんは福岡の生まれなんだけど中央で政治活動をして久しいお人である。彼の思考様式が東,西,どちらに属するのか,判断するのは難しい。俺は彼がおそらく東京人の発想で「検討」するのではないかと想像している。政治家・公人として,大阪人あるいは関ヶ原以西人のひねくれ思考に立つとは考えにくいからである。かつて大阪に暮らし,いま現在は首都圏で生活する俺の思考(「検討する」を前向きに捉える思考)と同じと考えるからである。