面白からぬ仕事始め

2016 年 1 月 4 日,雪下麥出づる冬至末侯,晴。うちのプロジェクトは昨日も仕事だったので,仕事始めという感じはあまりしなかったが,事務所の真向かいにある東京証券取引所は,本日がいわゆる大発会であり,ビルの正面口の前を通りかかった時,大発会に参加したと思しき振袖姿の美人さんを何人も目にした。暖かい,穏やかな日和だった。

新年早々,別の部に異動したあるプロジェクトの遺した経理処理の不手際が発覚し,その尻拭いをしなければならないハメになった。工完した開発案件にくだらない理由で月々の経費が発生していたのである。この問題のプロジェクトは何年もの間継続しているうちに,管理者も,担当者も頻繁に交代しているので,いったい誰の管理不良でこうなったのか,調べるだけで途方に暮れる。最後のプロジェクトリーダ(元俺の部下だった主任)に,「おめぇが後始末しろ!」とは言ったものの,彼もまた他人から引き継いだ事項にこの費目がなく,なんの認識もなかった。異動先の部と掛け合って,この行きどころのない経費を異動先の間接費に付け回す調整をする。経理部は怒りまくって,「どんな原価管理しているのか,大問題ですよ。現任主義ですからあなたの部で後始末してください」だと。カネは異動先に押し付けたものの,反省文,つまり始末書を書けと言われる。どうしてこんなことが起きるんだ? 始末書はいったい誰が書くんだ,え? 始末書というのは,企業人にとっては,考える以上に重いものなんである。面白からず。

帰宅時,新橋のヤマダ電器で,Au ガラ携用の小物を買う。出先用に充電器,バックアップ用にイヤホンミニジャックアダプタ(音楽を聴くイヤホンを携帯電話に接続するためのコネクタ)を買い求めたんだけれども,Au CDMA AC 充電器は手に入ったが,アダプタは取り扱っていないという。いまや,携帯市場はほぼスマホオンリーになってしまっていて,ガラ携ユーザはハッキリいって閉め出されたような状態になっている。トホホである。娘に訊いたところ,「そんなの百均で売ってるよー」ということなので,ま,今日のところは諦めることに。面白からず。

このあと,煙草を買い,携帯 LISMO でアルヴォ・ペルトのスターバト・マーテル(聖母哀傷, 1985)を聴きながら帰宅した。面白からぬ仕事始め,現代宗教曲のなかでも霊的な作品でこころを整えよう。Gidon Kremer のヴァイオリン,Vladimir Mendelssohn のヴィオラ,Thomas Demenga のチェロ,The Hilliard Ensemble の声楽による 1987 年,独 ECM Records 輸入盤。素晴らしい盤である。

ところで,先日,携帯 LISMO で使っていた Pioneer 製イヤホンが壊れ,ONKYO 製 E200B という「インナーイヤーヘッドホン」を新調したんだが,なかなか具合がよろしい。ヨドバシカメラでいくつか聴き比べてこれを選んだ。もとより携帯電話の MP3 再生機構である以上音質は望むべくもないので,思うに,イヤホンも 3,000 円程度の安物で十分である(混雑ばかりしている道に最高時速 300km/hr のスーパーカーは不要なのだ)。この製品のよいところは,安価なわりにシャープな再生をすること以外に,コードが二極螺旋構造になっていて,絡みつきが起きにくい点である。これは,携帯利用にとって,とても重要な特長である。ポケットからイヤホンを取り出してお祭りをほぐすのに,これまでどれだけ苛立たせられたことか。二線が螺旋構造に捩ってあるのはおそらく極性分離,コードの強度向上のためなのだろうけれども,一方で,絡みつきが起きにくいという,俺にとってある意味で,音質以上に大事なメリットがある。この構造をもつイヤホンをあまり見かけないのはどうしてだろうか。オススメの一品です。

 
Arbos
Gidon Kremer (Vln), Vladimir Mendelssohn (Vla), Thomas Demenga (Vlc)
The Hilliard Ensemble
Ecm Records (2000-01-25)