あけましておめでとうございます。
今年の年末年始は飛び飛びで仕事が入り,ゆっくり休むという感じがしない(年明けに担当システムが本番稼働を迎えるんである)。それでも,大晦日は妻と紅白歌合戦,ゆく年くる年を観て,恒例感を味わった。このところ,紅白の趣向は懐メロのオンパレードに近く,2015 年第 66 回はとくにその傾向がひどく,老害というコトバが頭をよぎった。テレビを観るのは年寄りばかりなり。紅白も棺に片足踏ん込めり。
レベッカ,X-JAPAN が出ていたのには驚いた。ゲスの極み乙女なるけったいな名のバンドが面白かった。AKB48がいろんな場面で踊っていて,相変わらずコキ使われている感があった。おお,当ったり前田敦子さんもいるじゃないか。去年さぶちゃんの「紅白卒業」をある意味で骨抜きにした大島優子さんをどうして呼ばないのか(否,じつは呼んだらしい。煙草を吸いに外したときに出て来たらしい。なら,なんでさぶちゃんを呼ばないのか!)。と,ま,あれやこれやで,それなりに楽しみました。真に 2015 年に支持されたと思しき若い歌手は知らない人が多くて,どちらかというと,私も棺桶に片足を突っ込んでいる方に属しているらしかった。
それ以外は,音楽を鳴らしながら夢野久作『少女地獄』を読むだけの,なんとも不景気な正月である。弄ばれた女が男に復讐をする小話を脈絡なく綴った,この退廃的な小説を読みながら,武満徹の室内楽集の CD を聴く。普段あまり使わないパワーアンプとスピーカに通電して,メンテナンスかたがた,鳴らしてみた。
いつもは YAMAHA の C-2x プリアンプ,B-2x パワーアンプ,NS-1 Classics スピーカの組み合わせで音楽を楽しむのだが,今回は同じく YAMAHA 製 B-6 パワーアンプ,NS-10M(Monitor)スピーカで。プリは同じ C-2x(2 系統のパワーアンプを接続できるんである)。CD プレーヤは DENON DCD-1650AR。これらは DENON CD プレーヤを除き,皆,1970 年代から1980 年代にかけて製造された年代物オーディオ機器である。CD プレーヤとて 20 年近く愛用した一品である。とくに NS-10M は 1970 年代末の高校時代から使って来たもので,ウーファにカビがこびりついている。B-6 パワーアンプはピラミッド型の個性的デザインもお気に入りである。猫がこのアンプを跨いで歩くうち,引っ掻き傷が付いてしまっているが,出て来る音はなかなかのものである。
案の定,NS-10 Monitor 右スピーカから音が出ない。接触部が酸化しているのでコードの芯を剥き直し。穴にコードを差し込んで引っ掛けるタイプのスピーカの端子も少しバカになっているようで,コードの芯を折り返して太くすることで密着させるようにしたら,きちんと鳴るようになった。私の青春時代の感傷のこびり付いた,相当にくたびれた NS-10M は,それでも,武満の凛とした異次元の音響をシャープにしてふくよかに再生してくれる。And Then I Knew 'Twas Wind — そして,それが風であることを知った。最近の再生装置のトレンドは知らないが,古くても私にはこれで十分である。アンプとスピーカについては昔からの YAMAHA ファンなんである。
YAMAHA NS-10M(左上)/ NS-1 Classics(左下)/ B-6 Power Amplifier(右)
夢野久作『少女地獄』の,校長先生の慰み物にされた少女・火星さんのエピソードはピンク映画になっている。小沼勝監督,1977 年作品。同性愛モチーフを盛り込んだ,ピンク映画らしい脚色がある。