ピエール・ブーレーズの訃報

1 月 5 日,フランスの作曲家・指揮者ピエール・ブーレーズが亡くなった。享年九十。音楽家の訃報としては 1996 年の武満徹のそれ以来のショックである。ご冥福をお祈りします。

ブーレーズは,思うに,近年は,かつてのアンチロマン主義的現代音楽の騎手たる作曲家としてよりもむしろ,指揮者としての名声のほうが高かった。私も大学一年のとき,CBS から出ていたシェーンベルクの『浄夜』弦楽オーケストラ版の録音ではじめてブーレーズの名を知り,以来,ウェーベルン全集など,彼の指揮・監修による新ウィーン楽派の演奏レコードを買い集めたものである。

ブーレーズが 1995 年に東京で「ブーレーズ・フェスティバル in Tokyo 1995」と銘打って近・現代音楽メインのプログラムによるコンサートを開催するときいて,もう居ても立ってもおれず,これは行くしかねえ,とばかりに,私は 6 月 1 日のチケットを手に入れた。シェーンベルク作曲・室内交響曲第 1 番作品 9,同・室内オーケストラのための三つの小品,同・幻想曲作品 47,ウェーベルン作曲・オーケストラのため五つの小品作品 10,そしてベルク作曲・室内協奏曲というプログラムであった。演奏はピエール・ブーレーズの指揮,アンサンブル・アンテルコンタンポランの管弦楽,ダニエル・バレンボイムのピアノ,ギドン・クレーメルのヴァイオリンという,これ以上望むべくもない顔ぶれによるコンサートだった。

私は,この時,ある特許情報システム開発作業のピークで二日連続の徹夜明けで,このコンサートのために赤坂・サントリーホールに職場を抜け出て来て,ぶっ倒れる寸前のような状態だった。で,もったいないことに,シェーンベルクの室内オーケストラのための三つの小品の二曲目で,少しの間意識不明に陥ってしまった。これほど素晴らしいベルクの室内協奏曲の演奏をはじめて体験した。そんなこんなで,私の人生のコンサート詣において,いちばん思い出深いもののひとつとなった。

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Pierre Boulez Festival in Tokyo 1995, programme booklet and ticket
 

数あるブーレーズの録音から,私の思い出の何枚かを上げておく。ウェーベルン全集は Grammophone からデジタル録音の新しい盤が出ているが,私はブーレーズが 1970 年代に録音した旧い CBS 盤のほうが好みである。ブーレーズ指揮によるオーケストラ作品の演奏のみならず,ジュリアード四重奏団による弦楽四重奏,弦楽三重奏が素晴らしい。

シェーンベルク:浄められた夜
ニューヨーク・フィルハーモニック
ソニー・ミュージックレコーズ (1996-10-21)
ベルク : ピアノ、ヴァイオリンと13の管楽器のための室内協奏曲
バレンボイム(ダニエル) アンサンブル・アンテルコンタンポラン ズーカーマン(ピンカス) ベルク ブーレーズ(ピエール) アリニョン(ミシェル)
ポリドール (1996-10-02)
Complete Works, Opus 1-31
Pierre Boulez (Dir)
I. Stern, Julliard Quartet
Sbme Import (1991-02-08)
Boulez in Salzburg [DVD]
ピエール・ブーレーズ (Dir)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ユニバーサル ミュージック クラシック (2003-11-01)