寒の入り・20 世紀の逆襲

ここのところ暖かい日和が続いたわけだが,二十四節気・小寒に入り,寒の入りとはよくいったもので,さすがに冬らしい寒さが訪れた。

先日,六日の日,一発目の次年度本部予算会議を終えて,頭を抱えるような宿題も出ず,比較的早めに仕事を上がった。いつもの煙草屋でゴールデンバットを買おうと,新橋駅で銀座線を降りてSL広場に出たら,黒山の人だかり。なにかと思ったら,ラ・ピスタ会員センタービルのイベントデッキで若い女性タレントが歌をうたっていて,大勢の見物客がそれに見入っているのだった。SL横の喫煙コーナーで煙草を吹かしながら,俺も少し楽しませてもらった。広場脇に停車したトレーラーの広告から,上坂すみれというタレントさんが『20 世紀の逆襲』なるアルバムのプロモーションを行っているようだった。20 世紀の逆襲? どういうこと?

上坂すみれさんの名は知らなかった。若者の渋谷とは違い,このオヤジの新橋では,知らない人のほうが多かったのではなかろうか。あとでネットで調べたところ,声優・歌手・タレントとあり,これは,ま,そうなんだろう,程度だったが,上智大学ロシア語学科出身というところで,大学で同じくロシア語を専攻した俺としては少し興味が湧いて来た。早くからロシア・ソヴィエトに関心があったということだけれども,БТ-5(ベー・テー・ピャーチ)型戦車などソ連軍ミリタリーファンであるとの件を読むに至って,ちょっと俺の理解を越えたロシアフリークのように思われた。ロシアに関心のある日本人はどこかクセがあるのは俺自身感ずるところだが(俺はいたって普通だと自認している),こんな人,しかも女性ははじめてである。どうも話が合いそうにない。俺は БТ-5 じゃなく Т-34(テー・トリーツァチ・チィティーリ)型戦車のほうを高く買う。否,そういうことじゃなくて。

帰宅したら,朝日新聞夕刊トップに北朝鮮水爆実験の記事。なんでも,昨年末にすでに核実験をやるとの挑発を北朝鮮はしていたらしい。どんなに世界から孤立し非難されてもこの体たらくで,ある意味で感心させられる筋金入りの鼻つまみ国家である。宗主国様の中国も困り果てているようである。わが国の隣人は,どうしてどいつもこいつも,こうもロクデナシなのかと,自己憐憫に苛まれてしまう。

韓国は,これに対抗して拡声器による宣伝放送 — そう,韓国の誇る宇宙最強兵器 — 攻撃を再開したそうである。自国の自由で豊かな国情を,北の不自由で貧しく恐怖政治に脅かされている国民に宣伝し,体制の動揺を意図しているらしい。だが,俺には,目クソが鼻クソに自慢しているようにしか見えない。韓国だって,若者に仕事がなく,老人はまったく大切にされず悲惨な境遇に晒され,自殺率は OECD 加盟国ワースト,わが国以上の老齢化速度で出生率はわが国以下で未来もなし,国の経済は外国資本に牛耳られ,いったい何を誇るというのか? おっと,人のこと言えんのか?

いまだにいがみあっている南北朝鮮は,民主的資本主義と軍国的共産主義(ただの独裁的全体主義)の悲劇的パロディである。だって,いまだに 20 世紀の時代遅れの冷戦構造に,しかも同胞の間で,どっぷり浸かっているではないか。一方で,わが国の戦後と戦前の喜劇的パロディである。というのも,韓国は戦後日本の経済大国成り上がり所作の猿真似劣化コピー,北朝鮮は戦前日本の軍国主義・全体主義の猿真似劣化コピーではないか。猿真似を自覚しているからこそ両国ともに日本に反発するのである。なるほど。20 世紀の己の姿の劣化コピーたる両国に困惑させられている 21 世紀の日本からみれば,この事態こそ「20 世紀の逆襲」ではなかろうか。

昨年末の,青天の霹靂のごとくであった,慰安婦問題日韓合意のウラにはこういう流れがあったのかと独り合点してしまった。愚かなことで同じ米国の飼い犬同士がいがみ合っている場合ではないと。

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