東京五輪エンブレム問題

いま,東京五輪エンブレムをはじめ,これをデザインした佐野研二郎氏は,数々のパクリ疑惑の渦中にある。

たしかに,あのエンブレムはベルギーのテアートル・ド・リエージュのそれと発想が酷似している。でもパクリかどうかはオレ自身は正直「判断がつかない」。線形,円形,多角形という素材の組み合わせはどうしたって相似たデザインがあるものではなかろうか。「素材」と「デザイン」はレベルが違う。ホント,これ,明らかに「パクリ」だとどうして言えるのか? 素材が同じなだけじゃないのか? なのに,パクリ問題ばかりが姦しく,佐野氏,東京五輪の委員会が叩きまくられているわけだけれども,「皆さんなんでこんなに他人への攻撃が好きなんだろうか」とオレなんかは半ば呆れている。

問題はこれがパクリかどうかではなく,しかるべきイベントの権威あるエンブレムとするのであれば,きちんと国際商標登録をしてから,このデザインを公にすべきだったのである。どうなんだろうか,東京五輪委員会はこのエンブレムを特許庁に国際出願をしたのだろうか。もし国際商標登録がなされていれば,どんなに似ていても,「アホかお前,ちゃんと国際登録されとるんやから,ぶつくさ言うのはただのやっかみ,集りっちゅうもんや」と涼しい顔ができたのに。「国際法」とはそういうものである。件のベルギーの劇場のロゴは商標登録されているのか? もしベルギーのデザイナーが国際商標登録をしていたら,完璧に佐野氏の負けである。要するに,佐野氏・東京五輪委員会が法的手続きの完了を待たずにエンブレムを発表してしまったことが一番の問題で,五輪委員会はどうしようもなく脇の甘いところをこういうところで曝け出してしまったように思う。

新国立競技場の問題だって,建物が実際に建造された例がひとつもない建築デザイナー(イランの有名な建築デザイナーである)をコンペで採用するなんて,どうかしている。コンペの結果が出た段階で,ある日本のゼネコンはこんな夢物語のような建造物なぞ実現できるわけがないと愚痴を漏らしたらしいが,実際に建物を建てる段階になって,まさにその通りになったわけだ。

どうも,五輪委員会は夢ばかりを追い求めていて,地に足のついていない組織のようである。エンブレム問題,国立競技場問題をみる限りにおいて,法学と建築学(物理学)を,つまり現実をよく見据えていないということだからだ。ま,東京五輪がなんとか成功裡に開催されるよう望む。夢のような五輪にはなりそうもありませんが。