国産ステルス戦闘機開発

政府,国産ステルス戦闘機「F3」開発へ 戦後初,エンジン製造にめど」(SankeiBiz 2015.03.17 配信)という記事を読んだ。日本もとうとう国産のステルス戦闘機を独自開発するらしい。米国が黙っているのだろうか。前途多難。

「防衛省は,国産戦闘機の開発費用として5000億~8000億円を見込んでいる」と記事にはあるが,そんなハシタ金で第六世代の戦闘機の開発ができるのか,というのが私の印象。米国は現時点の最強戦闘機とされる F-22 ラプター(昨年,シリアの空爆で使用されたことが話題になった)の開発・生産計画に 650 億ドル(7.8 兆円)を見込んだ(Wikipedia 記事による)というのだから,第二次大戦中の日米の物量差を見るような感がある。ま,戦前の貧乏国・日本も名機・零式艦上戦闘機を製作した歴史をもち,その DNA を受け継ぐ三菱重工やらIHIやらが現在も地道に技術を研ぎ澄ましているわけで,低予算でもそれなりに競争力のある戦闘機を作り上げてしまうかも知れない。

この記事の末尾に,防衛省の見込みとして次のようなくだりがある。

新たに戦闘機100機の費用として国家予算から4兆円の支出が行われた場合,同省は受注する航空機産業などで6兆9000億円の需要が,さらに所得の増えた関連産業の従業員などによる消費拡大などで1兆4000億円の需要が生まれ,経済効果は合計で8兆3000億円に達すると試算。これに加え,24万人の雇用機会が生まれるとしている。

なるほど,戦闘機の話題なのに経済効果,雇用効果で結ぶところが日本人らしい締め括り方だと思う。私もそういう意味でこの話は頼もしいと思われた。

日本は長らく武器輸出三原則により武器の海外輸出について大いなる制限を自ら課していたが,第二次安倍内閣になり,2014 年 4 月に「防衛装備移転三原則」という枠組みが閣議決定されてから,日本の軍需産業製品を海外に「移転」する法的根拠が与えられた次第である。となると,将来的にこの新型戦闘機も高付加価値を有する輸出品になる可能性もあるというわけである。

軍需産業や,武器輸出について「死の商人」などという陳腐極まりない紋切り型を叫んで,日本がそれに関与することを蛇蝎のごとく忌み嫌う,手の白い清潔人がたくさんいる。まるで,平和を愛する責任ある先進国なら武器を売ったりしてはならない,とでもいうかのごとくである。でも,私はそうは思わない。なぜなら,GLOBAL NOTE『世界の武器輸出額 国別ランキング・推移』2013 年によれば,米国はもちろん,英国,フランスの「戦勝国」をはじめ,ドイツ,イタリアの「敗戦国」だって武器輸出額世界ランキングのトップテンに顔を並べており,日本だってその市場に参入するに後ろめたさはどこにもなかろうと思われるからである。「日本は軍国主義化している!」と罵っている「自分のことは棚上げ国家」の代表・韓国ですら第 14 位なのである。

軍備はどこの国も安全保障上必要なものとして備えるわけだから,日本が関与しなくたって,この統計値に見えるとおり,どこかの国がどこかの国にビジネスとして供給しているのである。こういう客観的事実を無視して,「死の商人」になるのはやめようなんて,なにドアホなこと(はっきり言って,「偽善」)を抜かすのか。武器輸出国たることに軍国主義云々の不名誉はまったくない。だって,先進諸国は皆勤しんでいるのだ。むしろ,日本製の戦闘機を買ってくれるような国は,日本とは絶対戦争をしないと意思表示をするようなもので(なぜなら,内部を知り尽くした相手の作った武器でその相手に立ち向かうバカがどこにいるのか),わが国の平和のための強固な絆になる。

安倍首相の頭のなかで,「アベノミクス第三の矢」に日本製軍需産業製品の輸出が入っているのは間違いない。海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦をオーストラリアに売る話がかなり現実化しているとのことである(海自の非原子力動力型潜水艦の技術水準は世界的にも凄いらしい)。一隻数千億で十隻ちかく輸出するとなると,数兆円規模である。また,そのメンテナンス,自衛隊との協力強化など,潜水艦の運用を巡って,日豪 Win-Win 関係の拡大も期待できる。

仮に,武器輸出において日本がランキング 6 位・ドイツなみの年 10 億ドルレベルで世界ランキングに食い込むことができると仮定すると(ちなみに 1 位・ロシアは 82 億ドル,2 位・米国は 62 億ドル,3 位・中国は 18 億ドル — 前掲 GLOBAL NOTE 資料による),毎年 1200 億円の輸出が見込まれることとなる。これまでにない,日本にとってまったく新しい市場であり,かつ,なかなかの数値ではないか。ん? パチンコ産業に負けてるってか? パチンコは万人の日常的娯楽なんだから,市場規模がデカイのは当たり前だ。

国産戦闘機開発という安全保障の話題について,日本国にどれだけ金が入って来るかしか頭にない俺もどうかと思いますが。