今年もはや一月も終わり。大寒の節気に寒暖激しく，体調もいまいちである。
いま新聞，テレビはイスラム国による日本人人質事案でもちきりである。いずれにせよ，ISIL なんてただの狂信的愚連隊・テロリスト集団であって，「交渉」などという理性的対応は意味がないと思われる。「イスラム国」などと state 扱い（ISIL の S）することすら，こいつらに乗せられた感がある（アラブの人たちは「ダーイッシュ」と呼んでおり，ここには強い蔑みが込められているそうである。だからここで ISIL と書くのも便宜上ということで）。
テロには決して屈しないという安倍総理の発言は支持したいと思うけれども，それでもやはり，人質となった方が無事帰還できることを祈るばかりである。人質となった後藤さんはジャーナリストとして自ら進んで危険地帯に飛び込んで愚連隊に捕えられたわけだが，日本政府にはわれらの同胞の日本人の救出のために出来る限りの努力をしてもらいたいものである。「自己責任」の議論はしてはならないと思う。
先般，フランスで週刊新聞社シャルリー・エブド社に暴漢が乱入して社員12名を射殺するという事件が起きたばかりで，イスラム過激派に対する恐怖と怒りが沸騰しているところである。この事件のあと，各国の首脳がパリに集まり，フランスの市民が全土で，報道によればなんと三百七十万人も結集して，言論の自由とテロ反対とを訴えてデモを行った。さすが自由の国，と印象づけられた。
でも，言論・表現の自由，「Je suis Charlie」のテーゼはこの事件とはなんの関係もないように私には思われる。犯人はイスラム過激派に洗脳されたただの前科者に過ぎず，この手の凶悪漢を出現させてしまったフランスの移民政策の闇（人種差別，移民使い捨て政策，貧困）こそが問題のような気がする。この事件のみならず，ごくごく一部の狂信的イスラム原理主義者集団によるテロ行為のおかげで，善良かつ平和的なイスラム教徒が全体として冷たい視線に晒される風潮になっているとすれば，それこそ自由の冒涜ではなかろうか。偶像崇拝を禁止するイスラム教徒全般を嘲笑うかのような，シャルリー紙最新号表紙を飾る困惑したモハメッドの風刺画は，いくらなんでもイスラム教徒を貶めていないか。ってわけで，俺的には Je ne suis pas Charlie。
それにしても，今回人質になった湯川さんが ISIL に拘束されたことは昨年の八月にすでに問題になっていたのに，マスコミがいまさらながらに大騒ぎしている。中東で行った安倍総理の演説が ISIL を刺激した，なんてマヌケな論評をなすバカな新聞もある（ウチが購読している朝日新聞だ）。普段は「中韓いよいよ崩壊」みたいな見出しばかりの下劣新聞（夕刊フジなど）ですら，通勤途中でみるキオスクの宣伝張紙はこの話題ばかりである。
政府は，実は，このような事態を早々に想定していたんではないだろうか。だから，比較的冷静な対応が出来ているように思われる。閣僚による独りよがりの舌禍もみられない。浮き足立っているのはマスコミと，これを政権攻撃に使う野党である。安倍さんの中東訪問というタイミングで身代金要求事案に発展するや，降って湧いたかのように新聞・テレビがこれに明け暮れ，自粛ムードさえ広がっている。こんなのテロリストの思うツボではなかろうか。
自由も，平等も，博愛も通じないテロリストには死を，ではなかろうか。彼らのような集団が出現してしまった歴史的背景，先進国による帝国主義的収奪という過去と現在があるのは理解できるが，それでもわれわれの目の前にいるのはただの凶悪犯罪集団である。この意味でテロリストと交渉はしないとの米国のポリシーは正しいと思う。
これで日本もテロの標的になるのか。いや，同様な犯罪者国家・北朝鮮による拉致テロで俺たちは不当な取引にすでに惑わさせられているではないか。とはいっても，こういうことが起きるとすぐ「自衛隊を派遣しろ」みたいな短絡的思考に陥る人が多い昨今，集団的自由権問題がへんに曲がって行く口実を与えないことを願う。
娘が大学の試験真っ最中。普段は遊びとバイトに明け暮れるア法学部生だが，こういう時だけは少しは勉強している。勉強ぐらい自分の部屋でやれっちゅうのに，リビングの広いテーブルを国際法，刑法，民法の参考文献で占有しやがる。明日は刑法の試験だと。偽計業務妨害って知っとるか。俺はテレビが観たいんや，いちびったマネしてくれるやないか。
娘は電気もストーブも付けっぱなしで自分の部屋に用があるのか，俺が風呂から上がると，リビングは無人。テーブルの上に刑法の教材と煙草の銘柄・わかば一箱。バイト代出る前でカネがないからわかばだと。女のくせに煙草吸うんやないとは言わんけどな，カネがないならガマンせえ言うんや。それに，親の俺はゴールデンバットなんや。いちびったマネしてくれるやないか。
