今年のナンバーワントリックスター

兵庫県議会の野々村議員が,温泉などに一年間に 2­00 回近く訪れながら,政務活動費として約 300 万円を支出していた — その号泣釈明会見。みなさんもごらんになられたとおもひます。最近の日本の政治家はいつたいどうなつてゐるんでせうか。関西にはケッタイな議員がおるもんや。集団に身を潜めてコソコソとヤジで陰険に自己表現なされた東京都議会のセクハラ議員さんたちと比べると,たった一人で堂々とアホなケレンで腹を捩らせ大爆笑させてくれるところがカンサイ。サンスポは「日本の恥」とまで書いていた。ハゲドー(ハゲしくドー意)!

集団的自衛権問題すら吹っ飛ぶ笑劇。閣議決定への抗議表明として焼身自殺された方もいらっしゃったというのに(この事件は新聞では小さくしか扱われなかった。衝撃的自殺案件は模倣者を出さない配慮のもとに大々的には報じられないのが現在の報道慣習だ)。世の深刻な問題を病的な振る舞いで混ぜっ返す劇場政治かとも忖度してしまった。野々村議員は一朝目覚めれば小保方さんを越える今年のブラックスターとなった感がある。というか,一つは抱腹絶倒させ,いま一つは深刻な政治的闇を体現しているという,二面性をもつトリックスターというに相応しい。

「少子高齢化という日本の大問題に一所懸命に取り組んでいるんだから少々の使途不明の政務活動費は大きな問題ではない」風の釈明はいかがなものか? 直近の三年間で 780 万円のムダ遣い(なにせ出張先が温泉ですから。というか,もしこれが空出張だとしたら公金横領だ。大阪地検特捜部のお出ましだ。お,可視化される取り調べでまた号泣してくれたりして)は,兵庫県民からすれば聞き捨てならないはずだ。

「やっと議員になったんです」。「誰が誰に投票しても同じやと思ってずっと投票してきたんです」。「あなたにはわからんでしょうね」。子供のような泣き喚きで抱腹絶倒のうちに何もかもを混ぜっ返してしまったわけだが,野々村議員のこうした言葉そのものは,背筋が寒くなるくらいにニヒリスティックな地方自治体政治の姿 — すなわち,政治家とは苦労して就くべき「職業」で,誰がやっても「同じ」ていたらくなのに,愚かな一般市民にはその高邁なる考えは「わからない」エライなにかだ,という自己認識 — を象徴しているように思われる。まさにトリックスター。

記憶のためにエンベッド。この人は税金で食っている政治家なのだから,ネット住民の悪意ある想像力に塗れさせられ,この程度の晒し者になるのは当たり前である。