立春の大雪。ヴォローシンの詩

東風凍を解く立春になったというのに,先週の陽気とは打って変わって寒さがぶり返し,今日は記録的な大雪となった。どこにも出かける気はしなかったが,煙草が切れてしまい,買いに出ることに。よく利用する自販機までの雪道を二キロほど歩いた。粘り気のある雪でしかも車や人の痕もまだ稀で,空と道は一面に白く柔らかかった。吹雪いて指先が,耳が凍えて堪えた。

20140208-snow.png

ロシア象徴派の詩人・画家マクシミリアン・ヴォローシン(1877-1932)の一篇の抒情詩が,モノクローム写真とともに,フェイスブックに投稿されていた。肩のはだけた黒衣の女が両手でうなじの髪を押さえる姿で立つ,物語性に満ちた一葉の写真。詩を訳してみた。

三韻脚アナーペスト(弱弱強格: трехстопный анапест)詩格による三拍子のダンスのような粋なリズム。なんとなくネクラーソフ風を感じさせる言葉。はかなくもすれ違うロマネスクな性愛を詠ったものだろう。ロシア・シンボリストのご多分に漏れず,ニーチェの影響が感じられる。

Максимилиан Волошин    
 
マクシミリアン・ヴォローシン  
 
***
 
***
 
Если сердце горит и трепещет,
Если древняя чаша полна... —
Горе! Горе тому, кто расплещет
Эту чашу, не выпив до дна.
 
もし こゝろが燃え うち震へるのなら
もし 古への聖杯が なみなみと注がれ… —
あはれ この杯を漏らし 零す者は
あはれ 底まで吞み尽くさぬ者は
 
В нас весенняя ночь трепетала,
Нам таинственный месяц сверкал..
Не меня ты во мне обнимала,
Не тебя я во тьме целовал.
 
ぼくらのなかで 春の夜は搖れうごき
奇しき月光は ぼくらを照らす…
ぼくのなかのきみが抱いたのは ぼくではない
闇のなかのぼくが口づけたのは きみではない
 
Нас палящая жажда сдружила,
В нас различное чувство слилось:
Ты кого-то другого любила,
И к другой мое сердце рвалось.
 
苛む渴きが ぼくたちを結びつけた
ぼくたちのなかに 別々のこゝろが ひとつに流れ合つた
きみは別のだれかを 戀してゐる
ぼくは別のだれかに こゝろをぶつけてゐる
 
Запрокинулись головы наши,
Опьянялись мы огненным сном,
Расплескали мы древние чаши,
Налитые священным вином.
 
ぼくらの首は のけぞり
火のやうな 夢見に醉ひながら
古への聖杯を 徒に流失させたのだ
なみなみと注いだ 聖なる葡萄酒を
 
(1905, Париж) (1905年,パリ)
20140208-voloshin-photo.png