昨日は首都圏もまれに見る大雪に見舞われた。今日も近所の人たちはショベルを持ち出して,雪かきをしていた。子供たちは大喜びで雪だるまを拵える。公園でそり滑りをする。私は家にいて,なにもせず。雪に埋もれてバルトークをアナログで聴く。
取り出したのは,管弦楽のための協奏曲,ヴァイオリン協奏曲第 2 番,弦・打楽器とチェレスタのための音楽。いずれもバルトークの管弦楽作品のなかでもっとも人気の高い作品だろう。
「管弦楽のための協奏曲」はアンタル・ドラティの指揮とアムステルダム・コンセルトヘボウの管弦楽による 1983 年・フィリップスの録音。堅牢にして優雅な演奏で,数ある名演のなかでももっとも好みの盤である。とくにインテルメッツォがよい。ストラヴィンスキー,バルトークについては,ドラティが私にとって最高の指揮者である。Béla Bartók - Concerto for Ochestra. Antal Dorati, Dirigent; Concertgebouw Orchestra, Amsterdam. 1984, PHILIPS, The Netherlands 輸入盤。
「ヴァイオリン協奏曲第 2 番ロ短調」。私は大学時代 — たしか 1981 年だった — に,石川静のヴァイオリン独奏,ヘルベルト・ブロムシュテット指揮・NHK交響楽団によるライブ演奏をFM中継で聴いて,えらく感動した思い出がある。カセットテープに収めたその録音を何度も再生したものである。その後,意を決して買い求めたレコードが,韓国のヴァイオリニスト・鄭京和(チョン・キョンファ)とショルティ/ロンドン・フィルとの競演によるこのロンドン国内盤だった。思うに,1970 年代に録音したこのバルトークとプロコフィエフのレコードが彼女の最高の盤である。最近はどうもイマイチになってしまった。宇野功芳のアホみたいな大絶賛のライナーノーツはどうでもよいとして,たしかにこの盤の鄭京和のヴァイオリンはピンピン尖って凄まじい。あの哀愁に満ちたテーマがサイケに聞こえて面白い。
「弦・打楽器とチェレスタのための音楽」は弦楽四重奏曲と並んで私のもっとも好きなバルトーク作品である。普段はブーレーズ/シカゴ響,小沢征爾/ベルリン・フィル,もしくはドラティ/デトロイト響の CD をかけるのだが,今日はソ連の巨匠・エヴゲーニイ・ムラヴィンスキイとその手兵・レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団によるメロディア盤を楽しんだ。1965 年,モスクワ音楽院大ホールにおけるライブ録音。ムラヴィンスキイのバルトーク,しかもライブ録音というのは,たいへん珍しいのではないだろうか。もう二十年近く昔に御茶ノ水の中古レコード店でこれを見つけたとき,西側ブルジョア新音楽も,さすがバルトークともなれば,ソ連でも演奏されたんだなぁ,そういう感慨におそわれ,迷うことなく購入したのである。テンポよく元気溌剌のよい演奏で,病的性質の感じられないところがその特徴だと思う。シベリウスの第七交響曲とのカップリング。CD では手に入らないのではないかと思う。Дирижирует Евгений Мравинский - Заслуженный коллектив Республики Симфонический оркестр Ленинградской государственой филармонии; Б. Барток - Музыка для струнных, ударных и челесты, соч. 1936-1937 гг.; Я. Сибелиус - Симфония No. 7 до мажор, соч. 105. ソヴィエト・メロディア Мелодия 輸入盤。
これらアナログレコードについて,いま入手可能と思われる CD 盤をあげておきます。ただし,ムラヴィンスキイのバルトークについては私の所有するライブ録音の演奏と同じかどうかは定かでない(この CD は所有せず)。
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ユニバーサル ミュージック クラシック (2005-06-22)
Georg Solti (Dir)
London Philharmonic Orchestra,
Chicago Symphony Orchestra
Polygram Records (1990-07-03)
Melodiya (2005-09-16)