2013 は喜劇で終わる

19 日に猪瀬直樹東京都知事が辞任。今日は安倍総理が靖国参拝。この人たちのしていることはよくわからない。周囲のブレーン的存在がきわめて優秀で,その人たちのおかげで身の丈に合わぬ業績(東京五輪招致,リーマンショック前への経済回復)を達成したら,今度は己自身の醜悪さをモロに出してしまい,ブチ壊す。こうして 2013 年の政治シーンもやはり喜劇で終わりそうである。

ま,秘密保護法,日本版 NSC を可決させた勇ましい愛国者・美しい憂国者・安倍さんのこと。この一年間の上々の首尾で,そろそろ右バネにも気を遣ったか。靖国参拝自体は,彼の崇高な宗教的熱情のなさしめるところなのだから,別にかまわないと私は思う(それにしても,宗教的行為なんだから,昼ご飯前なんかではなく — お腹がへって冷静さを失う刻限ではなく —,公務が終わってからにしてくださいよ! 靖国神社へのお詣りは私だって当然のようにやりますが,仕事中に行ったりしません)。でも,中国・韓国の顔色を窺わないのはまだしも,これはいま彼がいちばん頼りにしている米国をも怒らせるのが,なぜわからないのだろうか。安倍さんは従軍慰安婦問題を巡る発言でもオバマから軽蔑の眼で見られているのに(首脳会談でのオバマの顔つきでそれがよくわかった)。思うに,心情的に安倍さんは他のどの国からよりも米国から嫌われている。先進諸国首脳のなかで安倍さんの宗教的情熱を心情的に理解できるのはプーチンくらいだと思われる。

来年三月に消費税が上がるとまた経済は冷え込むだろう。実のある成長戦略のない,ただ輪転機を廻すだけのアベノミクスは,いまのところ円安ゆえの株価高をもたらしているけれども,来年六月(消費税があがったあとの企業四半期決算のころ)が正直怖い。ただでさえ,国家予算の半分を国債が占めるなんて異常な事態なのである。来年韓国経済が深刻な事態になったら(2014 年は,韓国にとって生産従属人口(食わしてもらっている人たち)が生産従事人口(食わせている人たち)を上回るターニングポイントだ。日本は 1993 年にこのポイントを迎えたが,この年こそバブル崩壊の年だった),それこそ完全に韓国は中国の属国となり,日本はその煽りを受け,ますます東アジアで孤立(「東アジアで孤立」というのは,文字通り東アジア全体が日本をのけものにするということではなく,中国を敵に回すということに過ぎないのだが。だって残りは弱小国家ばかりじゃないか)するかも知れない。

米国が助けてくれるはずがない。だって米国はホンネでは日本よりも中国の方が好きだからである。中国の防空識別圏問題でも米国は中国にイヤミは言ったが撤回せよとは言わなかった。米軍と中国軍とがニアミスを起こしたみたいな報道で米中の危機が煽られているが,実際は日本が米国に梯子を外されているというほうが当たっている。米国の航空会社は皆,中国政府に対して防空識別圏航行の申請をするそうである。申請をしないのは日本政府の圧力を受けた全日空と日本航空だけである。こうして海外の旅行者は日本の航空会社を使わなくなる。だってヤクザな中国軍戦闘機に撃ち落とされるかも知れないではないか。昔,大韓航空機がソ連のミグに撃墜されたように。

安倍さんには,もっと回りをよく見て,頑張ってもらいたい。心情的にイケ好かない人間でも,日本代表なんだから応援しているんである。え,猪瀬さん? 政治ごっこはもうやめて(だって本人が「政治の素人だった」と言ってるじゃありませんか。ふざけんな。もともと「プロ」かどうかなんて政治には無関係なのだ),また — 何年か塀の向こうに行かなきゃならないかも知れませんが — ノンフィクション作家にお戻りください,てなもんや。神奈川県民の私には東京都知事のことなどどうでもよい。