シリア情勢 — いやだいやだ

シリアへの軍事介入の是非を巡って国際世論が沸立っている。化学兵器をシリア政府軍が反政府軍に対して使用した — こんなウワサをもとに英米仏がシリアを空爆すると息巻いている。大量破壊兵器の所持ないし使用に対して大国が軍事行動を起こす ー イラク侵攻の根拠だったのだけど,結局イラクのどこにも大量破壊兵器は見つからず,なのに何十万人ものイラク人が殺され,イラクはいまだに昏迷のなかである。米国の国際的責任はウヤムヤのままである。そこでここへ来てまたもや,シリアの化学兵器疑惑。化学兵器を使ったのか,使ったのは政府軍なのか,じつは反政府軍ではないのか,これらひとつひとつになんの確たる証拠なしに,英米仏は軍事行動を目論んでいる。英国は良識ある議会の否決で踏みとどまりそうであるけれども(英国政府も,わが国と同様,国力低下に伴い対米従属根性丸出しになった)。どうせまたイラクと同じ失敗をする,そういう臭いがプンプンである。

日本は対米従属が国是であってみれば,シリア事案についても早々に米国支持を表明し,おまけに「緊密な連携」を米国に約束した。アベ先生の肝いりで内閣法制局長に元外務官僚が就任したいま「集団的自衛権」がおおっぴらに認められる可能性が大いに高くなった。そうなれば,自衛隊も米国の要請でシリアに「イヤイヤでも行かせられる」ことになりそうである。ああ,いやだ,いやだ。最近「日本人は平和ボケで世界の現実から眼を背けている。憲法を改正し軍事的にも世界に貢献せねばならぬ。自虐的歴史観を克服し中国・朝鮮の脅威に対抗せねばならぬ」風のわかったようなことを言う輩が多くて,ホント,ウンザリである。ならお前がシリアへでも,尖閣諸島へでも,竹島へでも,突撃して来い。近代的総力戦の何たるかを「忘れた」こういう猛者気取りの輩こそが「平和ボケ」の最たる徴候であって,「非戦」を掲げた憲法九条は現代のキナ臭い世界情勢だからこそ「戦略的」意義をもつのだ,ということが理解できないのである。

日本はすでに自衛隊という戦力を保持し「自衛」の名目で戦争に訴えることが国際的にも暗黙のうちに認められている。だって,軍事的手段による国際紛争の解決は国際法で認められているのである。イスラエルがじつは核兵器をもっているということとは根本的に違う。国際世論を味方にできれば,憲法を改正しなくとも,いつでもどのような戦争でもおっぱじめることができる(戦争というのは常に「自衛」の名のもとに行われて来たのだから)。しかしその一方で,軍事力の行使は軍事衝突の勝敗とは無関係に国力を大量消費してしまうので,「どんな事情であれ攻められない限りは絶対に戦力を行使しない」というわが国のこれまでの原理原則は,きわめて安全かつ狡猾な国力安定策である。日本は戦後の安全保障についてじつに狡猾に振る舞って来たというべきなのである。この狡猾さをこれからもうまく発揮すべきである。

戦後の日本は米国の核のカサの下で平和を維持し経済発展した。憲法を理由にキナ臭いイヤなことはすべて米国に押し付け,自分は安全なところでラクをして団扇で扇ぎながらで暢気に金儲けして来たのである。これこそ日米同盟のわが国にとっての本義である。これこそ,これからも変らない日本の進むべき道である。米国をたんとうまく使ってやるのだ。集団的自衛権の容認,憲法改正など絶対にやるべきでない。これをやってしまうともう「戦争しない,できない理由」がなくなってしまい,外交無能のわが国は真の意味で米国のいいなりになってしまう。米国という他国の要請で戦争をおっぱじめることができてしまう。

戦争を行う法整備なんかに現を抜かすその前に,国際謀略でも,敵国政府要人の買収工作でも,スキャンダル捏造でも,性的籠絡でも,何でも,どんな汚い手を使ってでも,自衛隊戦力・兵力を使うことなく,外交的交渉・工作でもってわが国の都合のよいように国際情勢を動かすこと。外務省,防衛省に望むのはこれに尽きる。私が政府要人なら,首相直属の内閣情報なんとやらみたいな責任の所在がはっきりするような間抜けな部署なんぞは絶対に作らず,暴対法で息もキレギレのヤクザを大量にウラで雇って,東アジア・欧米で暗躍させるんだけどな。だって,成績優秀だが汚いことのできないお坊ちゃん外務官僚・エリート国家公務員よりも,義理と人情で何でもやってのけるヤクザのほうがよっぽど頼りになりそうではないか。おまけに伝統的に日本のヤクザは政府に忠実なのである。昔,左翼デモ妨害や労働組合潰しに政府はウラでヤクザを大活躍させた。まさにそのように,いま,国際舞台で大活躍させるんだけどな。もちろん,卑劣な工作が仮に明るみに出てもヤクザが勝手にやったと公言してトカゲのしっぽ切りができるようにする。テレビの見過ぎか。冗談が過ぎました。