2020 東京五輪決定

なんと東京に決っちゃいましたね。震災復興もきちんと進められない状況で五輪なんてお祭りはとんでもない,と東京五輪招致に否定的な真面目な方もいらっしゃるのだが,それはそれ,これはこれ。五輪開催は国際的地位を高める素晴らしい国家的事業であり,わが国全体の利益になるだろうと信じたい。

それにしても意外でした。私はイスタンブール,イスラム世界のなかで国家として安定しており(いまデモ騒ぎでいささか揺れているけれども)かつ宗教的排他性の薄いトルコの首都こそが,イスラム世界が偏った視線にさらされているいま,オリンピック開催都市として相応しいと思っていた。東洋と西洋を結ぶボスポラス海峡の地というのも象徴的でよいではないか。また一方で,福島原発汚染水問題はいよいよ大騒ぎになるし,東京都知事・猪瀬は五輪開催地に絡んでイスラム教徒を侮辱するようなバカ発言をするし,大阪市長・橋下は慰安婦問題にまつわるバカ発言をするし(韓国政府の思うツボ),元首相にして現財務相である麻生は「ナチスに見習え」の改憲バカ発言をするし,国連事務総長からは「歴史を反省しない国」とわけのわからないレッテルを貼られるし(※),と,ここのところわが国は世界に対して恥を晒し続け・辱められ続けだったので,とても東京五輪決定は無理だと思っていたのである。カネがものを言ったのか。いや,安倍首相がよく頑張ったと思う。

※ 9.11 付記:日経ビジネスの公正な記事によれば,パン・ギムンさんの実際の発言は日本の歴史認識を非難するようなものではなかった。日韓両国の愚かなマスコミがそれぞれの思惑で都合のよい部分だけを引き抜いて自国民に相手国を貶めるプロパガンダとして利用した,というのが妥当な解釈である。菅官房長官は事実確認をきちんとした上でこの問題に幕を引いた。

さらにもうひとつ,今回の招致活動の成果として,予期しなかった驚くべきことが起った。福島原発汚染水問題について — 対策のために東電ではなく国のカネを使うというほかは — 誰も何もコミット・約束しなかったのに,五輪招致のプレゼンで安倍首相が解決を約束した。つまり,国際社会に向って,福島原発問題解決(廃炉は別として)の最終期限を 2020 年以前に設定したということである。日本国民には何も約束しないくせに。こうして日本のお上は何につけ外圧による既成事実なしには物事を動かす対話力・行動力に欠け,万事後手後手に回ってしまうお国柄である。おそらく 2016 年リオ五輪のあたり(さあ次は東京だー!の狼煙が上がるころ)には,東北大震災のモニュメントとともに完全復興した東北の姿を国内外に見せられるのではないか。今回の五輪招致活動において安倍首相が福島問題で責め立てられて奇しくも問題解決を国際社会に対して約束してしまったからには,原発問題への対応も加速する。...はずである。でなきゃ日本人全体がウソツキになってしまう。

五輪開催が決った。これから日本国は表向きキレイな方向に突き進むはずである。これで消費税アップも確実になりそうである。新宿,浅草,川崎,横浜あたりのいかがわしいエリアは様々な一斉摘発が進んで壊滅するかも知れない。ヤクザも壊滅,ホームレスも行き場を失うだろう。いよいよ日本がPTA的清潔国家になってよいことである...。いや,悪はいよいよアンダーグラウンドに潜んで深海魚のように醜怪になるわけか。