雨霽れて Mozart

麦秋至る小満・末候。五月の暑気も本格的になり,会社ではノーネクタイで出勤するスーパークールビズがはじまって一月ばかり,例年より十日ばかり早く梅雨入りしたと思ったら,今日は昨夜の雨も霽れ,清々しく涼やかな日となった。雨霽れて涼風とほす衣更へ。

この爽やかな陽気のなか,書斎で『鏡花全集』巻二十二所収の怪異潭『眉かくしの靈』を読み,また,モーツァルトを聴く。Christopher Hogwood の指揮,The Academy of Ancient Music の演奏による後期交響曲。Mozart, The Symphonies Vol. VI: Paris & Vienna 1778-1788, L'Oiseau-Lyre 1988 年,西独輸入盤。モーツァルト交響曲全集の第六巻である。

絹の織物のように繊細な弦楽とふくよかな管の,清冽な音響。ホグウッドのモーツァルトは,小編成の古楽器アンサンブルによる,モーツァルト時代様式再現の試みの走りともいえる名演だと思う。ブルーノ・ワルター,カール・ベームの演奏の陽と陰の近代的造形もよいが,ホグウッドの演奏は理屈抜きの愉悦に溢れている。いまでこそオリジナル楽器によるモーツァルト演奏は当たり前になったが,出たばかりの学生のころこの全集を耳にして,私はそれこそ霧が晴れるような驚愕を覚えた記憶がある。

手元にあるホグウッドのモーツァルト交響曲全集 CD は,L'Oiseau-Lyre レーベルから 1980 年代末に出た全七巻の西独輸入盤だが,いまアマゾンで検索すると同じ録音がワンセットで出ているようである。そのリンクを設置しておく。モーツァルト・ファンなら持っていてしかるべき名盤だと思う。モーツァルト・ファンを自認できない私が言うのも何ですが。

mozart-hogwood-symphonies.jpg
Christopher Hogwood (Dir)
The Academy of Ancient Music
Decca (1999-08-25)

鏡花の『眉かくしの靈』については,また日を改めて。