円安大台突破

円安が急激に進み,昨日とうとう 1 ドル・100 円を突破した。朝日新聞にデカデカと出ていた。バブル崩壊後でも日本製品の国際競争力が高かったころでだいたい 1 ドル・120 円くらいだったかと思う。もしそれくらいに「戻る」のであれば,韓国に(極度の円高のおかげで)コテンパンにやられていまや目もあてられない半導体などの産業も,息を吹き返す可能性が出て来る。円高基調ゆえに製品品質を限りなく高めることで競争力を培って来た日本企業は,この円安でその強みをいよいよ発揮する。中国の尖閣反日デモで厳しい業績に見舞われたトヨタ,日産は急激に息を吹き返した。ウチの会社が中国経済の失速に悩まされているのはトホホなんだけど。

一方で,日本政府の借金が今年度中にとうとう 1000 兆円を越えるというニュースも流れている。日銀が輪転機をブン廻して国債を買いまくることから危惧される国債暴落の危機と,国際競争力の復活との狭間で,アベノミクスは危ない橋を渡っている。明るい近未来を描きたいところだけど。国際市場でドイツ製品と韓国製品のシェアを奪還して,富を日本に取り戻す。円安でもろもろの輸入品の物価が上がる以上に給料が上がる。お金も使いたくなる。こうなってほしいものである。

安倍さん,絶好調ですね。今夏の参院選も安泰のようである。外交でもなかなかよいところを見せている。ロシアに行ってプーチン大統領と北方領土について会談した感触も悪くなかった。先だって森・元首相が日露関係修復の先鞭を付けたあと,成果を急がずとにかく信頼関係を醸成することが安倍さんの今回の課題だったが,上出来のように見える。経済人をたくさん連れて行ったのも,「自分のことしか考えていない」という独善的印象(菅首相がそうだった)をプーチンから拭い去るのによかったと思う。日露の接近で,中国をも牽制できる。安倍さんの訪露は評価してよいと思う。あとは「間違っても北方領土が戻って来て欲しくない」冷戦時体制依存症の人たちに足下を掬われないようにしてほしい。安倍さん,訪露の前に「四島返還」を口にしていただけに危ないんである。「四島一括返還」を口にしてそれまでの対露外交の積み重ねを台無しにした小泉内閣外務大臣・川口順子みたいなホント愚かな(つまり,自分の信念を「国家の原理原則」だと考えていた)外交は頼むからやめてくれ(川口順子は,今般,中国でまったく同じアホを為したおかげで解任されてしまいましたね。川口順子といい,小池百合子といい,千葉景子といい,なんで日本の有力女政治家はこうもXX揃いなのか)。

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今日,本当なら等々力スタジアムにフロンターレとセレッソとの J1 サッカーを観に行くつもりだったのだけど,雨で面倒臭くなってやめ(雨でも応援に行くぞ,という人には頭があがりません)。書斎で江戸文学(例によって艶本)を読み,雨の声とともに音楽に耳を傾ける。

今日取り出した CD は,中世・ルネッサンスの古い声楽曲。タリス・スコラーズの『The Essential Tallis Scholars』二枚組と,セクエンツィア中世音楽アンサンブルによる『ダンテとトロバドール — ダンテが敬愛した 12-13 世紀の抒情詩人の歌』。タリス・スコラーズの無伴奏混声合唱はまさに霊的といってもよいくらい,心にしみ込む力がある。CD のパッケージもたいへん美しい。セクエンツィアのアルバムは,中世の吟遊詩人がフィドルを提げ恋愛歌を歌いながら荒涼とした野を行く姿を髣髴とさせる。厳かな古い教会や貴族の豪華なサロンではなく,映画『薔薇の名前』に出て来るような中世の暗い荒涼な野の風景こそを思い描かせる。

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Essential Tallis Scholars
Tallis Scholars
Gimell UK (2009-05-01)