また寒さがぶり返した今日,会社の管理職向けセミナーのため久しぶりに大森に出向いた。某大手インターネット・コマース会社の開発マネージャによる講演があり,ビッグデータ活用についてたいへん面白い話をしてくれた。Apache Hadoop を用いた大規模並列処理のシステム構成法などは目新しいとは思われなかったが,私の仕事ではまず直面することのないコンシューマ向けシステムのアルゴリズムや購買ユーザ傾向の分析例は,いたく刺激的だった。
ビッグデータはクラウド・ソリューションと並んで最近のIT業界における熱い話題である。ビッグデータ解析によって,昨年のAKB48総選挙のランキングが16位まで正確に予測された,との話題をインターネット・ニュースで読んだ記憶があるが,ビッグデータのマイニングは,もちろんそんな話題性のためだけでなく,ビジネスに直結したアプリケーションでこそ有効活用されている。ネット・ユーザの嗜好・購買行動は正規分布せず,冪乗則に従ったいわゆるロングテール現象を起こし,一般的概念・先入観の通用しないマニアックなジャンル・商品をも幅広く扱うことの重要性や,そこからこみ上げて来る驚きを,面白おかしく説明してくれた。楽しんでシステムを作っているところに羨望の念をいだいた。ロマネ・コンティのヴィンテージ・ワイン,日本の古城が,それぞれ一千五百万円,十億円の値段を付けてネットショップの画面でクリックを待っている様相は,確かに常識を越えている。
今日はホワイトデー。昔,この日は女子社員からの義理チョコへのお返しに結構な出費を覚悟したものだが,最近はそのようなことはなくなった。妻と娘にだけ,帰宅途中に買って帰った。
今宵も一駅前から歩いて帰る。ちょっと不吉な赤らんだ三日月が,西の空に沈もうとしていた。音楽のお伴はキム・カシュカシアンのヴィオラ。近・現代音楽の渋い録音を出してくれる独 ECM レーベルから二枚。一枚は,パウル・ヒンデミットの Trauermusik 葬送曲,クルシストフ・ペンデレツキのヴィオラ協奏曲,ベンジャミン・ブリテンの Lachrymae 涙。いま一枚は,ベーラ・バルトークのヴィオラ協奏曲,ペーター・エートヴェシュの Replica,ジェルジュ・クルタークのヴィオラと管弦楽のための楽章。カシュカシアンの共演者はそれぞれ Dennis Russell Davies 指揮シュツットガルト室内管弦楽団,ペーター・エートヴェシュ指揮オランダ室内管弦楽団。キム・カシュカシアンのヴィオラは,彼女の容姿と同様,チャーミングで艶やかである。バルトークさえもがお洒落に聞こえる(冗談)。ヒンデミットの Trauermusik は心を癒す音楽であり,現代音楽の奇矯な音響が苦手なクラシックファンにもお勧めです。
Dennis Russell Davies (Dir)
Stuttgarter Kammerorchester
Ecm Records (2000-04-18)
ペーター・エートヴェシュ (Dir)
オランダ放送室内管弦楽団
ユニバーサル ミュージック クラシック (2000-08-23)