春宵ノ上弦・WBC・Impressions d'enfance

今宵は上弦。顧客を接待し,疲れた。艶めく春宵に漢詩七絶を一首捻る。

   春宵,顧客ヲ遇シ,上弦ノ月ヲ看ル
 
  氛滿春庭細膩潤  フン春庭ニ満チ 細膩サイヂトシテウルホ
  柳花攀折迎官人  柳花ジ折リ 官人ヲ迎ス
  遺巫山幻獨彷巷  巫山フザンノ幻ヲ遺シ 獨リ巷ヲ彷フ
  弦月中天睚皓瞋  弦月中天ニシテ ニラカウトシテイカ
 
 氛気は春の庭を満たし きめこまやかな湿りを帯びる
 攀柳 折花  大切な顧客をもてなす
 巫山の幻を後にして ただ一人 巷を彷徨った
 弦月は天の真ん中で 白く怒り睨みつけていた
 
(1) 詩格: 七言絶句仄起式平韻偏格
(2) 韻字: 潤・人・瞋(上平聲十一眞)

例によって,misima 漢詩平仄音韻分析・旧字変換を用いて字体変換,平仄チェックをした。このツール,旧字・旧仮名変換については限定公開である。友人,俳人・歌人・詩人,海外日本語学習者にだけは,個別に公開している。「自稱・正字正かな文化人・傳統擁護論者」予備軍の方々には間違っても使わせないのがポリシーである。

LaTeX で組んでみた。以下はその組版画像と LaTeX 原稿。

zekku-06-shunshou.png
% -*- coding: utf-8; mode: latex; -*-
% 七絶 2012.1--2014.2
% $Id: shichizetsu.tex 11 2013-03-19 13:22:55Z isao $
\documentclass[12pt,b5paper]{tarticle}
\usepackage[T2A,T1]{fontenc}%
\usepackage[russian,japanese]{babel}
\usepackage[deluxe,expert,multi,jis2004]{otf}% OTF 和文(齋藤氏)
\usepackage{sfkanbun,furikana}% 漢文訓点・縦組振仮名パッケージ(藤田先生)
\usepackage{plext}% pTeX 縦組拡張
\usepackage[osf,swashQ]{garamondx}% Garamond font
\newcommand{\saku}[3]{\normalsize #1 #2, #3.}%
\newcommand{\cpright}{%
  \hfill\copyright\ \raisebox{0.308em}{2012--2014, \textit{isao yasuda.}}}%
\pagestyle{empty}
\begin{document}
~\par
\begin{kanshiyomi}{10zw}{20zw}
\daisakushai{春\CID{13831}\CID{13736}\CID{13759}客看上弦\CID{13746}}%
{\hfill\saku{Mar.}{19}{2013}}
& \hskip1zw \kana{春\CID{13831}}{シユンセウ},\Kana{\CID{13759},客}{コ,キヤク}ヲ%
\kana{\CID{13736}}{グウ}シ,\kana{上弦}{ジヤウゲン}ノ\CID{13746}ヲ\kana{看}{ミ}ル \cr
%
氛\kundoku{滿}{}{チ}{二}春\kundoku{\CID{13481}}{}{ニ}{一}細%
\kundoku{膩}{}{トシテ}{}\kundoku{\CID{20166}}{}{フ}{}
 & \kana{氛}{フン} \kana{春\CID{13481}}{シユンテイ}ニ\kana{滿}{ミ}チ %
\Kana{細,膩}{サイ,ヂ}トシテ\kana{\CID{20166}}{ウルホ}フ \cr
柳\CID{13666}攀折\kundoku{\CID{13742}}{}{ス}{二}官\kundoku{人}{}{ヲ}{一}
 & \Kana{柳,\CID{13666}}{リウ,クワ} \Kana{攀,折}{ハン,セツ} %
\kana{官人}{クワンジン}ヲ\kana{\CID{13742}}{ゲイ}ス\cr
\kundoku{\CID{13642}}{}{シ}{二}巫\kundoku{山}{}{ノ}{}\kundoku{幻}{}{ヲ}{一}%
\kundoku{獨}{}{リ}{}\kundoku{彷}{}{フ}{レ}\kundoku{\CID{7679}}{}{ヲ}{}
 & \Kana{巫,山}{フ,ザン}ノ\kana{幻}{マボロシ}ヲ\kana{\CID{13642}}{ノコ}シ %
\kana{獨}{ヒト}リ\kana{\CID{7679}}{チマタ}ヲ\kana{彷}{サマヨ}フ\cr
弦\CID{13746}中\kundoku{天}{}{ニシテ}{}\kundoku{睚}{}{ミ}{}%
\kundoku{\CID{7844}}{}{トシテ}{}\kundoku{瞋}{}{ル}{}
 & \kana{弦\CID{13746}}{ゲンゲツ} \kana{中天}{チユウテン}ニシテ %
\kana{睚}{ニラ}ミ\kana{\CID{7844}}{コフ}トシテ\kana{瞋}{イカ}ル \cr
\end{kanshiyomi}
 
\vspace{2zw}
\begin{quote}
氛気は春の庭を満たし きめこまやかな湿りを帯びる\\
\kana{攀柳}{はんりゆう} \kana{折花}{せつか} 大切な顧客をもてなす\\
巫山の幻を後にして ただ一人 巷を彷徨った\\
弦月は天の真ん中で 白く怒り睨みつけていた
\end{quote}
\cpright
\end{document}
pLaTeX2ε入門・縦横文書術
藤田眞作
ピアソンエデュケーション
* * *

ワールド・ベースボール・クラシック決勝ラウンドで日本はプエルトリコに完敗した。残念ながら三連覇は達成できなかった。それでもベスト4なのだから選手たちは胸を張ってよい。選手や,球場まで出向いて応援したファンの人たちは,お疲れさまでした。

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今日の一枚。ルーマニアの作曲家ジョルジェ・エネスク George Enescu (1881-1955) 作曲のヴァイオリンとピアノのための『幼児の印象』Impressions d'enfance for Violin and Piano, Op. 28 (1940) ほかヴァイオリン曲。Mihaela Martin のヴァイオリン,Roland Pöntinen のピアノによる瑞々しい演奏で。スウェーデン BIS 輸入盤。

『幼児の印象』とは一風変わった表題である。幼児の世界感覚を想像的に表現したというのだろう。作品は,それぞれ題を持つ 10 の小品から成っている。ヴァイオリンの多様な奏法を駆使した,色彩豊かな音像が愛らしい。

Impressions D'enfance Op. 28 / Sonatas Violin 2 & 3
Mihaela Martin (Vln)
Roland Pöntinen (Pf)
Bis (2002-02-26)