2012 仕事納め

なんとも早いことに今年ももうおしまい。はーぁ,ってな感じ。

23 日に家族でクリスマスと長男の誕生日をお祝いした。今上陛下と同じ誕生日。クリスマスに隣接しているのでいつも同時。なので,息子にはちょっと不憫である。就活用のネクタイをプレゼントした。

海外ではメリー・クリスマスと,来る新年のハッピー・ニュー・イヤーとを同時に言祝ぐのが通例で,Facebook でもいただいたメッセージはすべてこのパターンだった。日本人なら,やっぱ,クリスマスとお正月は別々に楽しみたいんだけどな。

ま,とにもかくにも,年末。もう終わり行く年はぱーっと忘れて,来る新年に向けて,私の好きな日本漢詩を三首,お贈りいたします。

  夜聞雁 夜,雁ヲ聞ク — 雪村友梅
 
短褐由来夢未全  短褐,由来夢未ダ全カラズ,
霜威況重五更前  霜威況ンヤ重シ 五更ノ前。
数声柔櫓過窓上  数声ノ柔櫓,窓上ヲ過グ,
還訝此身波底眠  還ツテ訝ル 此ノ身ハ波底ニ眠ルカト。
  次明絶侍者雪中韻 明絶侍者ノ雪中ノ韻ニ次ス — 絶海中津
 
積雪山中午掩扉  積雪ノ山中 午扉ヲ掩ヂ,
䰞茶烟起湿林霏  茶ヲ䰞テ烟起コリ林霏ヲ湿ス。
為憐雲外松巣鶴  為ニ憐レム 雲外松巣ノ鶴,
清唳時時刷縞衣  清唳シテ時時ニ縞衣ヲ刷フ。
  辛丑元旦二首 其一 — 渡辺崋山
 
万甍烟裏海暾紅  万甍烟裏 海暾紅ナリ
投刺飛轎西又東  刺ヲ投ジ轎ヲ飛バシテ西又タ東
滾滾馬声皆酔夢  滾滾タル馬声 皆酔夢
今朝真箇迎春風  今朝真箇ニ春風ヲ迎フ

雪中の鶴のごとく気高く,冷たい波底に心静かに瞑目し,滾滾たるバ声をよそに春風を言祝ぐ。そんな境地に至りたいものである。

雪村友梅(せっそんゆうばい),絶海中津(ぜっかいちゅうしん)はともに五山の禅僧詩人。渡辺崋山は江戸後期の文人にして,蛮社の獄に繋がれて切腹した蘭学者。辛丑元旦は天保十二年,すなわち,崋山最後の元日だった。

ロシアの友人に送ったクリスマスカードにこれら三首を拝借した。背景絵は月岡芳年『全盛四季冬 根津花やしき 大松楼』から。

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2012 Xmas card
 
日本文人詩選
入矢 義高
中央公論社 (1992/08)