SONY MiniDisc Deck MDS-E55

最近めっきり使う機会のないミニディスク,MD ってやつ。一時期は,そのコンパクトなサイズにして,CD に近似した音質,かつ CD と同じ時間の繰返しの録音・再生が可能であるという機能性から,カセットテープを完全に駆逐してしまう普及を見た。とはいえ,ソニーの MD ウォークマンがバカ売れしていたのも,ホント,Apple 全盛の今は昔の話となり,かつての天下のソニー製ポータブルオーディオの趨勢はいまや見る影もない。祇園精舎の鐘の聲。

私の所有するソニー製 MD デッキは MDS-E55 という結構な機械で,スタジオのラックにマウントして設置し,テイクを確認するような人向けの,プロ仕様のモデルである。ウォークマン用 MD を作るための録音専用機として愛用していた。ところが何年か前に(!),ディスクを呑込んだままイジェクト出来なくなってしまい,それっきり,MD の凋落を象徴するようなこの事態を放置していた。時代は Apple iPod の世の中になっていた。諸行無常の響きあり。

このお休み,何を思い立ったのか,どうせこのまま捨てちまう運命なら,ディスクを取り出すために出来ることをやってみようと,ボディを開いて機械のなかを確認してみることにした。MD デッキは,ハウスに MD をローディングするとき,ノッチを押して記録面保護シャッターをスライドさせて記録面を露出させ,ヘッドを TOC(Table Of Contents: 記録情報管理部)に位置づける複雑な機構をもっている(テープを長々と引き出して回転ヘッドとローラーにぐるぐる巻き付ける昔のビデオテープデッキほどではないが)。そういうことで,ウチの機械が,EJECT 表示し MD をしっかり抱え込むようにホールドしたまま,MD ローダーの機械的可動部でカチャカチャもがき苦しむような異音を発している — そんな様子を観察しても,取りつく島がなかった。思い切ってドライバで「暴力的に」MD を内側から押し出してみると,MD がゴリゴリ出て来た。電源を入れると「NO DISC」に表示が変った。「お!」。もう一度 MD を挿入してみると TOC を読んで READY 状態になった。「お!」。再生ボタンを押すと,宇多田ヒカルが歌い出した。「よっしゃー!」。

直った,ようだ。でも,同じように MD がイジェクトされなくなって困っている人は,これをマネしてはならない。本気でデッキを直したいなら,ソニーのサービス窓口に修理を依頼すべきである。調べたところ,MD デッキの修理をソニー・サービスセンタに依頼すると,目安として 14,700 円の費用が掛かるらしい(これは持ち込み修理の料金である。出張修理となるとさらに上乗せされる。修理見積りも有料である。製品型番によっては修理不可となることもある。もちろんこれらは保証期間切れの製品についてである)。これなら中古で購入したほうがよいようにも思うけれど,愛着のある機械なら修理したいものである。私には愛着が,というか,先立つものがありませんでした。

SONY MDS-E55