下期のはじまり

9 月 30 日夜間に台風で暴風が吹き荒れ,10 月 1 日の川崎は台風一過,快晴だった。

会社は下期がスタートした。上期ははかばかしからず,なんと予算未達。製造業企業が予算を達成できないのは一般の人が思う以上の深刻な事態なのである。しかも中国のあの騒ぎで会社全体の今年度業績も見通しは明るくない。尖閣諸島なんてちっぽけな領土を巡るつまらない問題(XXな石原知事のおかげで,尖閣諸島事案はもはや「領土問題」になってしまった)で,中国市場での日本への風当たりが尋常でなく,財界はエラい迷惑をしている。政治的要因とはいえトホホである。あーあ。また冬のボーナスが下がる。出社の途中,ぶつぶつ。

自民党,とくに総裁に復帰した安倍さんは,民主党政権の対中外交の弱腰を非難している。またそれに同調するXXナショナリストが多いのなんの。吐気がする。敵は本能寺にあり。2010 年 9 月と今回の 2012 年 9 月のかかる事態になるまで尖閣諸島問題を放置したのは,ほかならぬ自民党政権じゃないか。日本の経済力が中国を上回っていた 1990 年代に手を打つべきだったのだ。経済力で中国に追い抜かれ,中国の市場・労働力・製品なしには日本経済が成り立たなくなった(この現実がわかっていないXXが多過ぎて,多過ぎて,多過ぎて,歴史は繰り返すというイヤな雰囲気になってしまった)いま,無人島のくだらない領土紛争で人気取りの安易な強硬路線なんかに走るのは,それまでのXXを冪乗するようなものである。次期総選挙で体育会系自民党が復権するとなると,この流れに拍車がかかるだろう。あーあ。となるといよいよ経済は末期的になり,俺もリストラを覚悟しなくては。

憲法を改正し,軍事力を強化し,中国の軍事的脅威に備えよ,だって? 何を悠長なことを言っているのか。そんな国力はもはや日本にはない。仮に日本が技術力に頼んで中国とコトを構えても,米国は,食わせてくれている中国に頭が上がらないので,有事においても「安保条約に則って」何かと理由を付けて傍観するはずだし(要するに,日米同盟は当てにならない),南シナ海上で中国によって資源調達が妨害・ストップされ,貿易立国の日本は生命線を絶たれ兵糧攻めに遇って終わりである。日本はご飯が食べられなくなる。日本は中国との戦争には勝てない。兵器性能は自衛隊のほうが上なので「局地戦」では日本が勝利するかもしれないが,戦争の「総力戦」には負けるパターン。先の日中戦争とまったく同じように,中国人がたくさん死んで中国が勝つパターン。核兵器を使わなくても中国が勝つ。太平洋戦争では日本は米国の圧倒的軍事力に「精神」で勝てると思い,負けた。次,日本は中国の圧倒的人口力と経済力に対し「技術」で勝てると思ったら,やはり負けるに違いない。だってご飯が食べられないと「技術」もクソもないではないか。歴史は繰り返すようである。歴史は,反省すべき対象ではなく(そんなことできるわけがない),そこから何かを学び取るべきものである。

熱い戦争は意味がないと思う。謀略でも,詐欺でも,暗殺でも,第三国教唆でも,核兵器極秘保有の流言でも,ハッキングでも,娼婦・男娼によるハニートラップでも,何でも,どんな手段を使ってでも,国民を戦場に送らず,国土を焼け野原にせず,日本に有利に紛争を解決に導くことこそが政府の役目だ。次の戦争に負けたら,今度こそわが皇国は終わりである。憲法9条の精神とは,どんな狡い・汚い手を使ってでも戦争を回避して,平和裡に紛争に勝つ,ということだと思う。憲法9条はわが国の国情に合った,インテリジェンス豊かな条項なのである。だいたい,中国と戦争をしてでも尖閣諸島を死守すべきだと言っているのは,己も己の子供も戦争にいかなくて済むと暢気に構えていられる,おまけに手前ぇは戦争なぞまるで知らないクセに勇ましさを煽っているという,かつて学生運動にかぶれて転向した世代,口先だけの,無責任な年寄りどもだ(こういうのこそ「平和ボケ」というのである)。あるいは,誰のおかげでメシが食えているかを考えなくてすむ,大学教員・学生など,社会的抑圧・生活感の薄い,青臭いスネカジリだ。そんな暢気な奴らの口車に,誰が乗るものか。

あーあ。と,虎ノ門病院前で,女子高校生が赤い羽根共同募金を呼びかけていた。私もささやかながら募金した。「きみたち,ごくろうさんだね」。「ありがとございまぁす! ここでいいですか?」と言って,赤い羽根を私のスーツの襟に付けてくれた。この子たちの未来を考える,天高い秋。

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