OB 会

昨日 10 月 3 日夜,久しぶりに会社の大学 OB 会に出た。新人歓迎会を兼ねたものだった。入社して 10 年くらいは必ず出席していたのだが,今世紀に入ってからは多忙にかまけて(半分ウソ。それまでの方が死ぬほど忙しかった)出られないことが多く,5 年くらい前に一度出た程度だった。大学の OB 会なんて,あまり愛着を覚えなくなってしまった。

新人はたったの二名。工学部大学院システム情報科学科修了のマスター男子と理学部数学科卒業の女子。ウチの事業部だけで私の出た大学の OB は 60 名くらいいるのだが,出席したその他 OB は若手主体の総勢 20 名。知らない顔ばかりだった。同じ会社の同じ事業部にいるのに,何としたことか。「もう俺は蚊帳の外か」。ま,もう出身大学どうのこうのいう年でもなくなってしまった。

ふたりだけ知った顔があった。ひとりは理学部数学科空手部だった見た目ヤクザの D 先輩。そしていまひとりは,同期の,工学部衛生工学科出身の F・ゆかりちゃん。同じ事業部なのに彼女とは 10 年以上顔を合わせていなかった。勤務地が違うので,ある意味で当然である。同期でしかも同じ大学の出身なので,入社当初はよく飲みに行ったものだった。他に三名いた同じ大学の同期社員は皆辞めてしまった。

ゆかりちゃんは,入社当初「コンピュータってまったくわかんない。教育受けてもさっぱりわかんない」といつもこぼしていた天然ボケ美人であった。それがいまや,ソフトウェア特許をいくつも出願し登録を果たした開発部 F 課長。アジャイルソフトウェア開発手法の専門家である。彼女の社内論文(『技報』と呼んでいる。私も情報検索システム性能検証について書いたことがあった)を何本も読んで感心させられて来た。私がシステム開発現場で半ば体力勝負の地を這うような泥臭い仕事に携わって来たのに対し,彼女は銃後の生産技術のスマートな仕事一筋を歩んで来た。もはや「ゆかりちゃん」と呼ぶには相応しくなかった。

二次会で酒を飲みながら話していると,彼女はまだ独身のようであった。キャリアウーマンと仕事を離れた世間話をするとき,私はひどく気を遣う。結婚や子供の話はなるべくしないことにしている。いっしょに飲んでいた D 先輩が横からずけずけ言う ー「でも,ゆかりちゃん,入って来たときと変わらないね,めんこいね。いよいよ古手川祐子に似て来たな」。「めんこい」とは北海道方言で「かわいい・女の器量がいい」という意味である。休日のショッピングや旅行などの彼女の話からは,家族の存在が感じられなかった。しかしながら,考えてみれば,私のようにこういうことを意識してしまうことこそ所帯染みた時代遅れであって,ベテラン・キャリアウーマンに対して失礼である。そういう女性がいることでいまの世の中が成り立っているところもあるのだ。

うむ,やっぱり D 先輩には敵いません。女性はまず誉めてあげないと。