中国反日デモ激化

尖閣諸島国有化を端緒とした中国各地の反日デモで騒然としている。日系企業店舗が破壊・略奪される事態に至っている。かつての文化大革命のようなノリである。私の会社でも,追って指示があるまでは,新規の中国渡航は原則禁止になり,現地の日本人スタッフも自宅待機状態になっている。

会社のウチの部は中国の事業部から若い中国人社員を研修生として招いていた。彼は肉親の入院の知らせを受け,急遽中国に帰国していたが,その後この騒ぎが起こったため,肉親へのケアが一段落してからも再来日を断念した。両親から日本にいま行くのはやめたほうがよいと言われたらしい。両親の言いつけは中国人にとって何よりも尊重すべきものであるから,もっともなことである。このため研修は中止となった。会社の同僚は皆,「もう来ないのか」と残念がっていた。

日本人と仕事の上や友人として付き合いのある中国人は,この反日デモは迷惑千万らしい。誰かが煽っているに違いないと言っている。そうはいっても,民衆による政治的な騒擾は収まるのを待つしかない。いまのところ日本人はロープロファイルに徹し中国人の友人たちと静かに付き合うしかない。この騒擾で個人的な友人関係に亀裂が生じることはない。政治的対立で政府や一部愛国者たちがどれだけ騒ごうが,それによって個人的な付き合いも壊れてしまうなんてのは,「その人の人間性が疑われる」というものである。それは竹島を巡って対立している韓国との間においても同じである。

このデモで中国の日本人権益・資産を,「愛国無罪」の名のもとなのかどうかは別として,中国政府は守ってくれないということが明白になった。これに対し,日本大使館は何故もっと強硬に日本人の財産と安全の確保を中国政府に要求しないのか。こんなことが度重なると,中国での日本企業の生産活動において現地人件費の高騰により原価低減の旨味が薄れつつある昨今,このような破壊的脅威・不安定は,日本の中国への投資をベトナム,ミャンマー,タイ,マレーシア,インドネシア,インドなどの東南アジアに振り向けるトレンドを,間違いなく加速させる。