アニキ引退

阪神タイガースの金本選手が今季限りでの引退を表明した。ここ数年の阪神の低迷よりもずっと残念な話である。

アニキは,昨年来の肩の故障で守備もバッティングも最高のコンディションとはいえないなか,低迷するタイガースの「戦犯」であるかのようなバッシングを受けていた。今世紀初頭のタイガース再生の原動力となり,連続試合出場記録を更新し,輝かしい実績を残したにもかかわらず,今般の不甲斐ないチームの責を一身に背負わされているアニキの姿を見ると,「タイガース・ファンって,なんてこうも冷たいのか」と思わないではおれなかった。「老害」だって? 真弓・和田両監督の杓子定規の金本起用法が愚かだっただけなのだ。そもそもタイガースが弱いのは,球団の人脈優先・儲け偏重体質の問題なのに。

金本選手の最大の魅力は「勝負強さ」だと思う。ここぞというときの気迫,粘り,怖さ,そして結果を導く技術と肉体こそが,彼の勝負強さの現われである。アニキはこれでファンを魅了して来たのである。これこそプロ意識の精華。もう年齢には打ち克てず体力の限界に近い状況なんだろうけど,この勝負強さはここイチバンの瞬発力をまだまだ秘めている。あと1,2年は代打戦力として充分通用すると思う。なのに。ファンによって貼られた「老害」のレッテルは,この鉄人のプライドを大いに傷つけ,気まずい幕引きを強いた。

引退後は,こんな冷たい阪神とは縁を切り,また広島に戻ってカープの若手選手の育成に励んでほしいものである。あるいは,阪神タイガースを「引退」し,定年を迎えたプロフェショナル社員よろしく,改めて広島カープの代打要員として「再雇用」されないものだろうか? 阪神タイガースは,アニキの引退とともに再び長い,長い暗黒時代を往けばよい。いっそのこと「阪急」タイガースにでもなってくれれば,私の幼少からのこだわりも吹っ切れるんだけどな。