ロンドン五輪が終わった。今回日本は,野球も,ソフトボールも競技種目になかったのに,史上最多の 38 個のメダルを獲得した。上々だったのではないだろうか。昨年の震災以降,アスリートも自分の活動の使命感やら,命の強さやら,復興への意志やら,何か得体の知れないものにつき動かされていたのではなかろうか。日の丸を背負うというナショナリズムだけでは説明できない何かに。それがこの結果に繋がったような気がする。
英国という成熟した国で,成熟した運営に支えられ,成熟した観客に見守られ,という最高の競技環境も手伝ったに違いないと思う。何せサッカーはウェンブリー,テニスはウィンブルドンと,各種スポーツの発祥地である英国ならではの「聖地」で日本人選手の躍動する姿が観られたのだ。なでしこ VS 米国の女子サッカー決勝戦は,サッカーの聖地・ウェンブリー・スタジアムに 8 万人を越える目の肥えた観客が詰めかけた。よいプレーにはどちらのチームにも大きな歓声があがった。これを観られただけで私は幸せだった。七つの海を支配しただけはあると,英国という国への尊敬を新たにした。五輪という祭典に夢中になりはじめたメキシコ五輪以降,ロンドン五輪は私にとっても忘れられない最高の大会になった。
なでしこ・銀,女子バレー・銅,女子卓球団体・銀は,とりわけ幸せな高揚感を味わわせてくれた。これら競技に出場した選手たちがこれまでの五輪で苦渋を舐めさせられていたのをよく知っているからこそ,彼女たちの栄光がまるで自分の家族の為した成果であるかのように,私は感激し,もらい泣きした。自分だって彼らのように努力すればもっとできる。そう勇気づけられた人は数知れないはずである。
それにしても,なでしこは凄かった。はっきり言って,ワールドカップ優勝よりも今回の銀は価値がある。ライバルたちに研究され尽くしたなか,敢えて自分たちのサッカーを貫いて得たメダル。グループリーグ・南アフリカ戦で誰がみても明らかな引分け狙い。引分けは相手が勝ちに来ている状況では勝つ以上に難しいのだ。しかも,スウェーデンの勝利を見届けてからの戦術変更だったのだ。それゆえの,フェアでないだののバカな雑音のかしましいなかで迎えた準々決勝で強豪ブラジルに,準決勝で苦手のフランスに,しっかり勝利するしたたかさ。米国との決勝戦も試合内容では米国に優るとも劣らなかった。そして表彰式でのあの明るさ。なでしこは,身体能力において劣る日本の知的スポーツマンシップの象徴にして,未来ある誇りである。
パラリンピックがはじまる。そして 19 日からはヤングなでしこたちの U-20 女子サッカー・ワールドカップ・ジャパン 2012 もはじまる。まだまだ熱い夏が続きそうである。
U-23 男子サッカーは惜しくもメダルを逃した。メキシコ戦で力尽き,元の「優しい」U-23 日本代表に戻ってしまいました。しかし,当初予想を遥かに上回ってベスト4に入ってくれた。次はA代表にも選出されて新たな挑戦をしてほしいものである。ところで,そのスーパーサブ・齋藤学くんはわが地元,川崎市幸区鹿島田町内出身である。モロッコ戦では惜しいシュートを放ち,レッドカードを誘発するいい動きもあった。
ベスト4進出を決めた5日・日曜日夕方,いつも行く床屋で髪を切ってもらいながら,店主の兄ちゃんと齋藤くんの話題で盛り上がった。齋藤くんゆかりの知り合いがインタビューでテレビに出たとか,ホント他愛ないわけだけど,地元町内の世間話としては欠かすことの出来ないエピソードなどを教えてくれた。日立の二本立てビルの工事中エリアの塀に齋藤くん応援ボードが大会期間中デカデカと誇らしげに掲げられてあった。記念に携帯デジカメで撮っておいた。