今日ロシアから Par avion で本が届いた。Мацуо Басё Хайку 1-100. Перевод и комментарии Дмитрия Н. Смирнова с примечаниями Исао Ясуды. СПб.: «КРАСНЫЙ МАТРОС», 2011。Dmitri Smirnov — ロシアの有名な作曲家で,芭蕉句でいくつも歌曲を作曲している — が昨年出版した芭蕉句ロシア語訳本である。
本書の特徴は,芭蕉の 1662-1679 初期 100 句のロシア語訳を詳細な注釈とともに収録していることにある。ロシアでは芭蕉初期の俳句が句毎に解説の付いた形式で刊行されるのはたいそう稀であるとのことだった。Smirnov 訳は,芭蕉句の音節数(字余り,字足らず含め)を忠実にロシア語に写しつつ,ロシア語詩としての自立性を目指している。
例えば「あやめ生り軒の鰯のされかうべ」(7-7-5)訳は次のとおりである。原典と同じ 7-7-5 音節で翻訳されている。
над застрехой ирисы
прорастают из глазниц
рыбьих на ветру...
この訳業で私は注解をお手伝いさせてもらった。出版されるとはつゆにも思っていなかったので,びっくりした。刊行直前の校閲で,Emacs 上の aspell ロシア語スペルチェッカを使って,かなりのミスプリントを訂正した。ちゃんと私の名前も入れてくれ,いまちょっと悦に入っております。私の仕事が公刊されるのはこれで 3 度目。私のヘボなロシア語を Smirnov が自然なロシア語に訂正してくれているのは言うまでもない。