北朝鮮,イラン問題

北朝鮮のロケット発射予告とイラン核開発問題がかしましい。

今週どこかでXデーを迎えるはずの北朝鮮ロケット実験は,2009 年にも「人工衛星」と称して行われ,麻生首相が迎撃すると息巻いてちょっと中国,北朝鮮がビビったところをみせた。今回はロシアが非難の気色を強めていて興味深い。米国から食料支援の合意を取り付けたすぐあとに(舌の根も乾かぬうちにと言うのか)旧西側諸国を敵に廻してでもミサイル試験に踏み切るこのクレイジーな国に,どことなく畏敬の念を覚えてしまう私はバチ当りか。

「餓えで死にそうな人がゴマンといるのに何やってんだ」的な,しごくまっとうな意見をもっている日本人は多いと思う。でも,軍事的優位(核兵器+ICBM 保有は圧倒的優位の条件である)のためには国民の数パーセントは犠牲になってもよいとキム王朝は思っているようである。昔,日本史の教科書に,世界大恐慌後の世相として,餓えに苦しむ子供がダイコンだか何かに齧り付いている東北の田舎の写真が掲載されていて,そのすぐそばに軍国主義の台頭の記述があった。北朝鮮は昔の日本とまったく同じなんである。韓国は官僚機構と大企業支配とを支える日本の超学歴主義的教育を模倣し,北朝鮮は日本の天皇神格化軍国主義を模倣した。彼らは,思うに,かつての日本のパロディである。まるで日本の戦前・戦中と戦後のメンタリティが北と南に別れて争っているかのようである。だからこそ,日本人には彼らの悪い所ばかりが目立つのである。日本もそういう一時期があったからには,北朝鮮を嗤うことが私にはできない。

北朝鮮がテポドンに核弾頭を搭載する技術を獲得したらどうなるのか。今回の実験がもし成功したら,あと数年でその域に漕ぎ着けるかも知れない。ま,日本は何もできない(当たるかどうかもまったくわからない — というか,多分当たらない — 迎撃システムに税金を注ぎ込むのが関の山である)。ま,(いままでどおり)韓国にお任せすればいいんじゃないでしょうか。そうやって北と南がいつまでたってもいがみ合っていてくれてくれたほうが,日本の国家的エゴイストにとってはよいと思う。

核ミサイル開発について北朝鮮とつるんでいるイランについては,あの宇宙人・ハトヤマ元首相がイラン訪問をしたそうである。そして帰国早々,彼が IAEA を批判したとのイラン政府の発表に「そんなことは言っていない,捏造だ」と記者会見しなければならないハメになった。皆「利用されたボクがバカでした」としかこの会見を受けとめていないはずである。野田首相をはじめ政府・閣僚皆から諌止されたにもかかわらず「世界平和と友愛のために」イランに赴こうとする彼の熱意はわかる。でも,この時期イランに「政治利用」されにのこのこ行くところ,どうも日本の政治家らしいナイーブさ(ハトヤマさんはホントにいい人なんだろう)が露になっていて,哀しくなる。日本国外務省のいない密室のようなところでなした会談なんて,どれだけイラン側に都合のよい発表をイラン政府が行おうと,誰も何もツッコめないというのがどうしてハトヤマさんにはわからないのだろうか。

イランは石油資源に関しわが国にとって大事な国であることは疑いがない。しかし,核開発について北朝鮮と同じ道を行く国であって,日本政府が意を決して,米国・EU と足並みを揃えてイラン制裁に踏み切った(というのも日本とイランの関係はきわめて良好だったので,政府は一大決心をしたのである。イランからすれば「ブルータス,お前もか」も同じだろう)いまこの時点では,核開発停止を「強制」する(「話合いでの解決」はこれまでのイラン政府の行動からして無理なのだ。この点においてもイランは北朝鮮とまったく同じである)以外のアクションは,国際社会の不信感を招く。せっかく米国の制裁対象国から外された(これは玄葉外相の政治決断の賜物である)のに,さらにイランに対して余計な追加制裁措置を取らざるを得なくなる(もともと玄葉外相はイラン制裁に反対だった)。民主党内部から造反分子が出まくって,野田さんが可哀想。