今日は春の嵐が凄まじく吹き荒れて,関東から西では交通機関がマヒする事態になった。今年は春一番の感覚がないと思っていたところに,過ぎた暴風。春の嵐というと,大貫妙子に同名の夢幻的な,私の好きな一曲がある。トラックが横倒しになる風景や,老婆が風に倒されて頭を打ち亡くなったなんていう事実をテレビで目にするにつけ,夢と現実の隔たりに呆れる。桜は無事だろうか。
五輪男子サッカーについて,FIFA は,所属クラブが代表招集に応じる義務を負うというルールを決めたらしい。これまで U-23 代表選出に関し,海外で活躍する香川選手,宮市選手,宇佐美選手などの招集は絶望的であった。五輪代表国が出そろったいまこの時点において,この取り決めに実効性があるとすれば,凄いチームを作る環境ができたことになる。もちろん,各国皆同じ条件でこの恩恵に与るのだから,これは別に日本にとってのみの朗報というわけではないけれども,五輪のサッカーをより面白くするには違いない。
U-23 は何年かかけて監督がチーム作りをしてきた。優れた選手をつまみ食いすることで,にわかに兎さんチームが狼さんチームに化けるわけではないだろう。でも,オーバーエイジ枠を含め,チーム力を最大限に高める努力は,いまのチームがいかにチームワークにおいて安定しているとしても,試みるべきである。U-23 日本代表は,左サイド,センターバック,ボランチに問題があるし,なにより,アウェイで決定的に弱いあの精神的不安定さ,経験の浅さがある。本大会では,海外で揉まれている選手,オーバーエイジの胆力ある選手をぜひとも招集してほしいものである。
これまで培ったチームワークを台無しにするって? そんなことを心配する前に,いまの U-23 日本代表のチーム力では,欧州・南米の代表にはまったく通用しないことを知るべきである。そもそも U-23 日本代表の顔ぶれだって 1 年で様変わりしていることを思い出すべきである。2 年前のエース(背番号 10)・水沼宏太すらいまや代表に選ばれなくなっているのである。いまの中心メンバーが選出されなくなるのに理由はいらない。過去の実績よりもそのときにパフォーマンス,コンディションのもっともよい選手を選ぶことが,勝つための鉄則なのだ。
五輪予選ではクラブ側事情で U-23 代表は各国とも理想的メンバーではなかった。欧州からはイギリス,スペイン,スイス,ベラルーシ,南米からはブラジル,ウルグアイが出場する予定である。一方で,W 杯では常連国であるドイツ,フランス,オランダ,イタリア,アルゼンチン,カメルーン,ナイジェリアといったサッカー先進国が出場を逃している。出場国はいずれもサッカー強豪国とはいえ,スペイン,イギリス(今回英国ははじめて大英帝国全体としてのナショナルチームを組織するので,大いに話題になった),ブラジルを除くと,「日本が到底与し得ない相手」のようには見えない。これは,なによりも予選において各国のもっとも優れた若手選手をクラブ事情で招集できなかったゆえではなかろうか。ここで関塚監督,日本サッカー協会が労を惜しまず最良の選択をすることにより,ベスト 4 も夢ではなくなると私は期待する(現 U-23 日本代表のままでは,予選突破=ベスト 8 が関の山である)。
FIFA の今回の取り決め(しかも予選終了後の)は,ホント,五輪を面白くしてくれそうである(あくまで実効性があればの話だけど)。