今年の NHK 大河ドラマ『平清盛』をちょっとだけ観た。第一話の再放送。音楽を担当しているのが吉松隆だというので,テーマ曲などを聴いたんである。曲最後の大団円はいつもながらの大河ドラマ風の大盛上がりなんだけど,そこに至るまでのピアノ,木管の扱いは吉松らしい,冷たい手の抒情とでも言うような(は?)音響になっていた。
オープニング・テーマに骰子が出て来た。何の意味があるのかよくわからなかった。「多分,白河院が『わが意のままにならぬのは双六の賽』とか言ったからじゃないの」と妻が教えてくれた。彼女は大学で『梁塵秘抄』を研究したので,平安末期の世相や今様,白拍子の世態風俗などに滅法詳しいんである。なるほど。「歴史における偶然」というのがドラマの大きなテーマになっているわけか。
今夜の『平清盛』にも白拍子・舞子が登場し(清盛は白河院と舞子との間に生まれた隠し子だった,という設定であった),あの有名な今様「遊びをせんとや生れけん,戯れせんとや生れけん」を彼女が口ずさむシーンが出て来た。この今様の旋律もおそらく吉松隆が付けたものだろうが,まさに「今様(モダン)」であんまり古典的な味わいはなかった。
岡田将生演ずる源頼朝が,平家滅亡の知らせを受けて清盛の業績に敬意を表するくだりがあった。岡田将生があまりに優男でもあり,「なんか頼りねえ頼朝っ!」とげんなりしてしまった。それとは対照的に,男勝りの北条政子役・杏の,武士のような装い,眉を剃った怖い顔には,ゾクっと来ました。主役級が線の細い草食系(ぽい)男優ばかりで,荒くれた時代のドラマとしては,どうもなぁ。平忠度・中井貴一と舞子(清盛の秘めた母)・吹石一恵も同じような関係である。男がMで女がSばかりってどういうこと? サムライブルーとなでしこジャパンを見せつけられているようである。ま,これからどうなるかわかりませんけど。
私も,昔は『天と地と』などの NHK 大河ドラマを熱心に観たものだったけど,歳を取るにつれ興味を失ってしまった。サムライブルーとなでしこジャパンのような,女の強い光景はサッカーだけでよいのだが,どうも NHK 大河ドラマを含め世の中全体の趣味・傾向がそうなってしまったからか。『平清盛』なんて人名の題名は,歴史の大河的絵巻ではなく英雄個人に映像の関心がフォーカスされるようで,しかも草食系優男の情愛や優しさに感動の焦点があるとしたら,私にはどうもつまらない。『篤姫』,『龍馬伝』で NHK は味を占めたか。
『平清盛』は開始早々,世評がいまいち。初回の視聴率が歴代ワースト三位だったという。兵庫県知事が「画面が汚い」と貶した,などというくだらないことさえ話題になっている。私は「画面が汚い」とは思わなかった。むしろ平安末期の大乱世なんだから,『羅生門』以上に,もっと汚くても,穢らわしくてもよいくらいだ。ま,大河ドラマご当地観光による地元経済効果を高めたい兵庫県知事のハラのなかとで,どっちが「汚い」かは措くとしましょう。
今年になり麻雀ゲームをはじめてやったら,四暗刻,ツモれば役満の三暗刻 12 飜三倍満をあがりました。新年そうそうツいているのか,早くも運を枯らしたのかはわかりません。家族からバカといわれております。