おっぺけぺえ

今年成人した息子に年金手帳が送られて来た。先日も年金の支払い案内の郵便が届いた。息子の世代はおそらく,年寄りのために身をすり減らされるだけで年金なんて貰えないだろうに,国は取り立てだけはしっかりやりやがる。

いまの若い奴らは本当に可哀想である。職にあぶれた若者が,体も頭も弱い老人相手にサギやひったくりで金を巻き上げるような,目を背けたくなるような犯罪が日常化してもおかしくない。それくらい若い世代の貧困が進んでいる。年寄りが遠回しに楢山まいりを強要されるような,非情の時代がそのうち来る。

学生のころ,『三時のあなた』みたいな主婦向け番組を観ていたら,夫を亡くした老婆が恐山のイタコに口寄せをしてもらうひとくだりがあった。老婆は生前女好きだった夫の浮気に苦しめ続けられて来たという。彼女は「何で私を粗末にして遊び歩いたのか,死んでしまったいま教えてくれ」とイタコに頼む。夫の憑依したと思しきイタコはただただこう言った:「おっぺけぺえ。おっぺけぺえ。わっけえのがイイ,わっけえのがイイ」。ババアより,ピチピチした若い女がイイから。おっぺけぺえは何が何だか訳がわからんが,そういうことだろう。煩悩ってのは,寄る年波でチンチンが立たなくなっても衰えを知らない。このジジイは冥界からもそう教えてくれていたに違いない。あの世でもピチピチした肌を追い求めて彷徨っているらしかった。ヤラセには違いないが,私は大いにウケて大爆笑した記憶がある。イタコってのはやっぱり存在価値がある,と納得したんである。

何でこんな話に。あ,そうそう,歳は取りたくない。若いのがいい。そうそう,いまの若い奴らが可哀想である。ただでさえ,歳を取るとおっぺけぺえなのに,若いうちからピチピチ,ムキムキとエッチもできず,結婚も出産も二の足を踏まざるを得ず,大量の年寄りの生活を支えさせられ,そして気づいたら自分もおっぺけぺえになっている,そうに違いない,いまの若い奴らが。