misima 漢詩作成支援・平仄音韻分析・詩語検索ツールに,旧字体変換機能と漢字検索機能を追加した。ただし,このツールは友人向けの限定公開であり,ユーザ ID,パスワードを入力しないとアクセスできないようになっている。
今回の追加機能は,先日,自分で漢詩を書く際に本ツールを使ってみて,足りないと思った機能である。そのときは手元の仮想端末から SQL を叩いて漢字データベースを検索して,欲しい平仄・韻をもつ漢字を探す,などしていた。せっかくだから,これらを Web 上で出来るようにした。旧字体変換はすでにある misima 旧字・旧仮名遣い変換サーブレットを呼び出すようにしただけである。漢字検索機能は,詩語検索とまったく同じ方式である(『DWR with Java: misima 漢詩詩語検索』を参照)。DWR
メインの画面(図 1.)に「漢字検索」と「旧字体」のボタンがある。
分析対象漢詩テキストを入力し,「旧字体」のボタンをクリックすると,入力した内容が旧字体に置き換えられる。図 2. はその実行前後を示している。
「漢字検索」右横の「開く」ボタンをクリックすると,漢字検索用の別ウィンドウがオープンする(図 3.)。
ここで「漢字」,「韻字」,「韻目」で検索が可能である。ある漢字の平仄,韻目を知りたいとき,「漢字」のテキストエリアに文字を指定する。複数指定することができる。「韻字」のエリアに漢字を入力して検索すると,当該漢字と同じ韻目の漢字の一覧が得られる。押韻文字を考えるときに役立つはずである。「韻目」は,韻目を指定して該当する漢字の一覧を検索するためのものである。韻目は「上平聲一東」のような複雑なものでありかつシステム内部において特殊な形式で管理している。この形式でユーザが入力するのは困難なので,韻目テキストエリアにカーソルが位置づけられるとメニューがポップアップし,ここに一覧された平水韻 106 項目から求める韻目を選択することにより,検索条件が設定されるようになっている。図 4. に韻目検索のポップアップメニューを示す。
「漢字」,「韻字」,「韻目」の条件は1回の検索ではどれかひとつしか指定できない。複雑な条件で検索するために「SQL」条件を設けてある。検索キー:漢字 ji; 平仄 hs; 字韻1 in1; 字韻2 in2; 音読 yo; 訓読 yk; 備考 bk を使って,SQL where 句のなかに書くクエリ条件を記述する。select * from KANJITBL where query condition; の SQL 文のうち query condition 部分のみをテキストエリアに記述する。最後の ;(クエリ終了を示すセミコロン)も書いてはならない。これはエキスパート向けであり,基本的には使う場面はないと思う。
検索結果には,漢字,平仄,韻目,備考が出力される。備考欄には,音読み,訓などの付加情報があったりなかったりする。出力例を図 5. に示す。
ここで,平仄欄の ○ は平字,● は仄字,◎ は平仄両韻字(意味によって平仄が違う)を示している。韻目欄の,例えば「hs:07:陽」というのは下平聲七陽を示している。hk: 上平聲,hs: 下平聲,sj: 仄上聲,sk: 仄去聲,sn: 仄入聲であり,コロンで区切られた数字と漢字一文字で韻目を表している。
これで,漢詩の平仄・音韻規則チェック,詩語の検索,漢字の平仄・韻目検索が揃った。これからは詩語データベースの充実を図り,漢詩作成の有益なツールになるようにしたいものである。