浪速高校大学合格実績を水増し

<浪速高校>大学合格実績を水増し 受験料負担し大量出願』なる記事が出ていた。こんなことが何故問題になるのかちょっと理解に苦しんだ。この高校,じつは私の母校である。もうちょっと別な — スポーツなどの — 話題で有名になって欲しかった。

でも,こんなことでは母校への私の愛着/プライドはいささかも傷つきません。私の在学したころの浪速高校は,男子校(いまは中高一貫の男女共学制になっている),中くらいのレベルの進学校で,生徒たちは旧き善き高校生みたいなのが多かった。いまや俳優になってしまった赤井さん(元プロボクサーの赤井英和さん。私より三歳上なのに何故かまだ在学中であった)が学校のヒーローであった。赤井さんは,ボクシングのアジアチャンピオンだっただけでなく,いわゆる強きを挫き弱きを助ける親分タイプで,いつも堂々としていて,めっちゃカッコ良かった。そのほか,『じゃりんこチエ』の作者・はるき悦巳さん,笑福亭鶴瓶さん,作家の藤本義一さんなど,個性的な先輩がいる。お笑い系が多いのが何とも笑えるんである。

キリスト教,仏教の学校は星の数ほどあるが,浪速高校は神社神道系で,極めて珍しい学校なんである。中庭には伊勢神宮分祀の神社があり,登下校の際は必ず二拝二拍手一拝(二回礼をして二回柏手を打ちもう一度礼をする,神社の正式な参拝方法)をしなければならなかった。入学した年の夏休みには一学年全員で伊勢神宮に合宿に行く。これは,神宮宿舎で毎日,毎日,祝詞を唱えて食事をいただき,神宮に参拝し,伊勢神宮神職の講話を聴き,日出のころあいに五十鈴川で禊をするのである。週に一コマ,宗教の時間があり,日本の八百万の神々の信仰,記紀神話,本居宣長ら江戸国学者の学説などなど,神道の伝統について学ぶ。

一般的観点からするとまるで右翼教育のようにみえてしまうかも知れないが,皇国史観を叩き込むのとはスジが違ったのであり,むしろ日本人の宗教観について考えることが第一の目的だった。『古事記』などの文献だけでなく,イザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』,和辻哲郎『風土』,ルース・ベネディクト『菊と刀』なども授業で読んだりしたのである。授業はめっぽう面白かった。いまから考えても,相当高度な授業をやっていたと思う。伊勢神宮合宿も忘れがたい経験になった。

浪速高校は,進学実績水増しなどという「受験」ネタにしか飛びつかない哀れな目線には絶対に理解できない,優れた教育をしていたと思う。現在も同じような教育を続けていると私は信じている。