柏レイソル J1 優勝

柏レイソルが浦和レッズとの最終戦を制し,J1 初優勝を果たした。NHK が放映してくれました。やりました。やっぱりワグネルが先制点を決め,これまで得点のなかった選手が追加点を上げ,底上げチームらしい守備力で守り切っての優勝。真っ赤に染まった埼玉スタジアム 2002 のアウェイの最終節で決めたこの優勝は,感無量である。さすがにアウェイでの優勝だったので,日立の社長が出て来ることは適わなかったんだけど,それも見たかったものである。

浦和は,フィジカルの弱い山田直がスタメンでワントップに入った。これで勝てると考えるところが私には疑問だった。これじゃゼロトップじゃねえか。FW,MF,DF というポジションがゲーム戦略上どうして存在するのかという基本スタンスがここにはない。このためか,柏のダブル・ボランチに簡単にチャンスを摘み取られて前線にフィードされ,とくに前半ではまったくボールが収まらなかった。その結果,受けに回った浦和は,守備力のヘボさがここでも象徴的に出てしまった。柏木,梅崎,山田直,原口,坪井,鈴木など元・現日本代表を多数揃えながら勝てない浦和。思うに,球際に弱く守備の意識が低いのが,あの弱さの決定的な要因である。熱狂的なサポーターが 5 万超収容のスタジアムを埋め尽くす,世界でも稀な好環境にあるにもかかわらず,この体たらく。そして守備力の高い柏にボコされるなんてのをみるにつけ,まるで満員の甲子園で貧打の中日ドラゴンズに押さえ込まれる阪神タイガースを見るようで — いつもの逆で — 哀しくも痛快であった。

柏の右サイドバック・酒井選手と浦和の左サイド・原口選手の日本代表二人の 1 対 1 の競り合いが私の個人的な見所だった。酒井は柏の躍進とともに急成長したサイドバック。今日も原口に決定的な仕事をさせなかった。守備と攻撃のバランスからいうと,私は A 代表の内田選手よりも酒井選手のほうが上であると思う。日本代表の将来を考えるとセンターバックをさせても充分機能すると思われるくらい,フィジカルもあり守備意識も高い。ブラジルのトップ・チームであるサントスからもオファーが来ているそうで,若いうちにさらに進化が期待できる。

柏は,昨年 J2 に落ちてから体制を整え,今年 J1 昇格していきなりの優勝。サッカーというものが守備を基本に試合を組立てるべきチームスポーツであることをまざまざと見せつけてくれる本当によいチームだった。今日の浦和戦はその象徴。レイソルが J リーグに参画し,西野監督がビルドアップしたが,その後低迷し,ネルシーニョ監督が再生してくれた。ブラジル人監督にしては意外にも守備重視と後半に畳み掛ける戦術とで悲願のリーグ制覇をもたらした。あとは天皇杯でもこの堅固なサッカーで勝ち抜いてほしいと思う。いや,やった,やった!
 

追記

浦和レッズの悪口をさんざん書いたんだけど,これも熱狂的サポーターに支えられているレッズには優勝争いをきちんとしてほしいからこそなのである。この試合後のレイソル優勝表彰式を見守ったあと,レッズサポーターはクラブのフロントを批判し夜 10 時まで座り込みを行ったという。こんな熱心なサポーターに後押しされているのに,ホント,命がけでやれというのである。

浦和は守備意識を高めれば必ず強いチームになる。いま堀さんが即製監督になっているが,「やらされ感」が漂っている。やっぱり,戦術に長けポリシーの一貫した外国人監督を招くべきである。サッカーの監督はサッカーがうまい人より頭のよい人が向いている。日本人監督は,たいてい自身が優れたサッカー選手だった体育会系であって,理よりも体が先に動いてしまうタイプが多く,ピッチの上からの俯瞰する視点ではなくピッチの中のプレーヤの視点で見るタイプが多く,要するに頭が悪い。監督は外国から連れて来るべし。「優秀だった」プレーヤ上がりではなく,冷徹な「経営者」を連れて来るべきである。それが世界のサッカー監督のトレンドでもある。