ベトナムで行われた U-19 サッカー・アジア女子選手権で,日本のリトルなでしこたちが見事連覇を果たし,来年ウズベキスタンで開催される U-20 女子 W 杯出場権を獲得した。五輪予選時のなでしこと同様,北朝鮮としのぎを削る恰好になったが,直接対決で勝利を収めたのである。おめでとうございます。それにしても,時事通信以外このニュースをどこも報じてくれず,日本のマスコミはどうしてこうもユースに無関心なのか。
U-19 世代は日本女子サッカー史のなかでも「黄金世代」と呼ばれるに相応しい。W 杯で優勝したなでしこA代表のひとりである岩渕選手の名前が轟いているけれども,今回のアジア選手権で活躍した京川選手,田中選手など恐るべき才能が揃っている。ホント,将来が楽しみなんである。彼女たちは,来年の五輪こそ難しいかも知れないが,次回の W 杯では間違いなく主要メンバーに入るだろうと私は確信する。
田中選手は JFA アカデミー福島の生徒である。 JFA アカデミーは,幼少時にその才能を見出された子供たちを集めて,中高一貫教育を行い,サッカーの「エリート」を養成する。日本人は「エリート」ということばにヘンな拒否反応を示す珍しい国民で,おまけに「エリート」をもっぱら「東大ほかの有名大学を卒業して中央官庁ないし一流企業に入った者」のことだと勘違いしている。そして,困ったことに,東大卒業者も,たとえ世の中の何の役にも立たなくても,暗黙のうちに自分を「エリート」だと勘違いしている。それは「ブランド志向」というものであって,「エリート主義」とは異なる。「エリート」とは,意志を持って,己の存在を賭けて,世界と対峙し自国を背負う人材のことである。JFA アカデミーは己の使命を,「『世界基準』をキーワードとし」,「サッカーはもちろん,人間的な面の教育も重視し,社会をリードしていける真の世界基準の人材,常に(どんなときでも,日本でも海外でも)ポジティブな態度で何事にも臨み,自信に満ち溢れた立ち居振る舞いのできる人間の育成」(JFA アカデミー)と定義している。これこそ「エリート」たる人間の養成というものである。日本もやっと「世界規準」に近づきはじめたような気がする。
JFA アカデミーを終えた者は,「エリート」としての自覚と責任感をもって,日本のために世界の強豪と戦うだろう。その素晴らしい成果を U-19 アジア女子選手権に見たように思う。本来ならば,サッカーだけでなくあらゆるテクニカルな分野においてこのような「エリート養成」をなすべきである。「ブランド志向」が「エリート主義」と取り違えられているからこそ,日本の官僚,政治家があのような体たらくになっているのだと思いませんか? この暗黙の自称「エリート」たち,算数国語理科社会のお勉強ができるだけじゃないですか! だから外国の官僚・政治家に「負ける」のである(外務省の振る舞い,国際会議での大臣の発言を見るとすぐわかりますよね)。