高岡蒼甫さんツイッター問題

先日,Yahoo! コメンターによる「韓流垂れ流しフジは売国奴」なる書き込みをからかった。その後,俳優の高岡蒼甫さんがツイッターで「正直,お世話になった事も多々あるけど 8 は今マジで見ない。韓国のTV局かと思う事もしばしば。しーばしーば。うちら日本人は日本の伝統番組求めてますけど」 と書き込んで大騒ぎ。結局,彼は事務所を退社した。別に好き勝手なことをツブヤイても罪はない。こんなことで,辞めることはないだろうと思う。社会人なら,雇主・スポンサーに対し根拠ない(なぜなら「韓国のTV局かと思う」くらい「韓流」垂れ流しでも,視聴率の上がらない「日本の伝統番組」とやらよりも総じて視聴者にとってありがたいわけなのだ。「日本の伝統番組」って何? 批判する一方で「つまんねぇ」と秘かに思う「日本の」番組にもアンタ出てたんじゃないの?)批判をするなら,辞めてからすべき。だから彼も事務所を辞めるしかなかったのだろう。

でも一方で,この人,誰のおかげでメシ食えてんのかどうも認識が足りない人物のようである。作家・詩人には,本というものが読者の求めに応じて出版され,その過程で,編集者・校閲/校正担当・組版担当・広報担当・印刷業者・流通業者・書店店員など様々な無名の人たちによる共同作業があることを無視して,自分の才能だけで本が出来上がり売れて行くと勘違いしている人がいる。高岡さんもどうも自分のエラさだけでテレビに出られていると思っていたようである。そうでなきゃ,ただ単に「韓流が嫌いだ」といえば済むのに,わざわざ雇主たるテレビ局の批判にまで飛躍しないではおれない,このような愚かな「強がり」ないし「自信満々」は出て来ない。頭を冷やしたあと彼が世間知らずの拭い難い後悔に苛まれることは間違いなさそうである。ま,世間知らずが仕事をホされていよいよ世間に悪意を抱こうが,俺にはどうでもいいけど。

高岡蒼甫さんが Twitter 発言で結果的に事務所を辞めるハメになった件について,「言論弾圧」だと息巻いている人たちがいる。彼は己の軽率な発言の責任をとらさせられただけで,弾圧なんて受けていない。顧客をバカにしたかどで会社をクビになる — これは不当な「弾圧」だろうか。これは単純に「社会常識」なんじゃなかろうか。こんなアホみたいなことで「言論弾圧」を持ち出すなんて,ロシアや中国で本当に弾圧されている — 要するに命の危険にさらされている — ジャーナリスト・活動家の目からは,日本は笑いたくなるくらい傷つきやすく健康的ないい国だと思われるに違いない。言論の自由? 聞いて呆れる。くだらない。

単に「韓流が嫌いだ」というに過ぎないのに,そこに「日本の伝統」がどうのこうのと持ち出してマスコミを叩く姿は,ネット「右翼」(本物の右翼に失礼であるから,括弧書き)とまったく変わるところがない。高岡さんは「日本の伝統番組」っておっしゃっていますが,それって何でしょう? 能や歌舞伎,茶の湯の特集番組でしょうか? では,高岡さんはいったいどのような「日本の伝統番組」に出演されていたんでしょうか? — 「伝統」という言葉,ここではまったく抽象的で現実味がない。そういうところがこの高岡 Twitter 問題の唾棄したくなる点なのである。中国や韓国に対しては,何にせよ「伝統」や「民度」を持ち出して攻撃的になる — これは最近の若いネット住民の特性になっている。「オレは韓国人や中国人に仕事を取られて困っている。だから奴らを追い出せ」— 私には高岡発言はこのようにしか聞こえない。安上がりの外国人のせいで俺たちの仕事がない。それならそう言えよ。「伝統」を持ち出すなんてクソくらえである。

俺だって,韓流みたいな猿真似商品(日本の昔のナイーブな恋愛テレビドラマのデッドコピー)は大嫌いである。とはいえ,一歩引いて日本のテレビ番組を改めて観察するがよい。はっきり言って,お笑いバラエティ番組ばかり。ドラマといえば,セックスの仕方も知らないような草食男女の馴れ合いセンチメンタルのクソである。韓国ドラマ以上に,出演するタレントの見た目で勝負している。韓流は,日本のかつての純情さを懐かしむ年寄りに支持されるし(リアリティがまるでないところもコピーされていて笑えるんだが),日本の番組制作に比べずっとコストパフォーマンスが高いので,テレビ局が「垂れ流す」わけなんである。「日本の伝統番組」? なにをホザいているのか。

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雇う側と雇われる側との協調ということで,思い出した。九州電力が原発のシンポジウムかなんかで社員に原発賛成意見のサクラをやらせた — そういう「ヤラセ」が問題になっている。たしかにセコいやり方だとは思うけれども,原発を止めたくない九州電力,ひいてはその社員にとってこのような行動に出るのは,ある意味で当然である。社員も組織的な指示である以上,原発で食っている以上,反対意見に「民主的に」反対しようとしても(だって誰が応じてもよい意見募集なんでしょ?),どこにも悪はないと思う。

そもそもこれが「ヤラセ」になるような意見の収集手段を採った「佐賀県民向け説明会」の運営方針こそまずいように思う。普通なら,多くの意見を正しく評価しようとすれば,無作為に選んだ電話番号に掛けて意見を問うなどの「作為が入りにくい,ヤラセの起きにくい」手段(新聞社が世論調査でよく行う手法)を採用するはずではないか。ということを考えると,この問題の首謀者は説明会の主催者にほかならないということになる。つまり,実行者の九州電力ではなく経産省,及びこれと結託した佐賀県こそが悪の元締めである。なのに,九州電力ばかりが槍玉に挙がっていて,海江田経産相は「九州電力はけしからん」としか考えていないというわけだ(笑わせてくれる)。ま,俺は原発推進には反対だから,この「ヤラセ」問題で推進勢力が叩かれるのは,悪くない。