Ю. Чумаков: Стихотворная Поэтика Пушкина

ロシアの Ozon から書籍が二冊届く。ロシアの文芸学者 Ю. Чумаков ユーリイ・チュマコフによる Стихотворная Поэтика Пушкина. СПб. 1999. (『プーシキンの詩学』) と В Сторону Лирического Сюжета. М. 2010. (『抒情詩のプロットに向かって』)

ユーリイ・チュマコフは 1922 年生まれで,かのユーリイ・ロートマンと同年であるが,日本では恐らくあまり知られていない。じつは私も Пушкинский Сборник. М. 2005. (『プーシキン論集』) に収録された彼の論文 О сюжете «Евгения Онегина» (『「エヴゲーニイ・エネーギン」のプロットについて』) で,はじめて彼の名を知った。これを読んで,韻文小説という作品フォルムから詩の面白さを明らかにしてくれるこんな研究者を,大学時代に知らずにいたことが悔やまれた。詩におけるプロットが散文小説におけるその意味と異なる特殊性に注目するところ,ロシアフォルマリズムの構造的視点に似ていると思う。

チュマコフはプーシキンのとくに『エヴゲーニイ・オネーギン』の作品論で素晴らしい洞察を発揮する。今回入手した『詩学』のなかでもかなりのページ数が『エヴゲーニイ・オネーギン』に割かれている。彼はこの作品の注釈書も書いている(残念ながら私はまだ読めないでおり,Ozon で古書が出るのを待っているんである)。私も『オネーギン』がプーシキンの謎めいたもっとも魅力ある作品であると疑わない向きなので,チュマコフの論考が楽しみである。
 

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サッカー・アジア杯の熱狂のウラで,エジプト,チュニジアの「民主化デモ」が大いなる話題になっていた。民衆がインターネットを通じて連絡を取り合い,デモが拡大した — 報道はこのように伝えている。中国も「民主化」というキーワードで世界から非難される立場にあり,アフリカの騒擾にピリピリしているらしく,インターネットのゲートウェイで「エジプトデモ」などの検索キーワードをブロックしたそうである。ま,心配しなくても中国であれほど大規模な「民主化デモ」はまだ起こりそうもない。一般の生活が相対的に豊かになっている社会では,反政府的騒ぎは民衆の賛同が得られず,小さいうちに摘み取られてしまうからである。

エジプトはアラブ諸国のなかでサウジアラビアとともに米国の「飼い犬」的存在の代表である。それゆえの長期政権。そんな国に「民主化デモ」が起こり,「民主化」を謳う米国は困った対応を迫られているようである。もし新しいエジプト政権が米国の思惑から離れてイスラエルに敵対的な方向に進むとしたら ... おそらく中東はいよいよキナ臭くなる。これがいちばん恐ろしいことである。
 

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サッカー・アジア杯の熱狂のウラで,日本の政局はどうかというと,元自民党議員,元たちあがれなんとかの議員,すなわち旧政権の亡霊のような与謝野さんがなんと財務大臣になっておりました(いまごろ話題にすることかよ)。こういう無節操がまかり通る民主党政権は,国民の政治意識を徹底的に殺いで — というのも,首を傾げさせるような行動を立て続けに堂々と起こされると,期待感が喪失して,ま,どうでもいいか,オレには関係ねぇやという気持ちが募るものなのだ —,無関心の上に長期政権化を図ろうとしているようである。あと小沢さんをブタ箱に送り込めば,安っぽい正義感に憤るバカどもの支持を集め,政権交代時の理想の封印が完成して自民党時代以上の官僚政治時代が訪れるんだろうな。菅内閣がなにもしなければしないほど,官僚は内閣の味方になって,政権が長持ちする。高齢のサラリーマンがほとんど役に立たなくてもそのまま定年まで職に居座るように,菅直人さんはなにもしないことで守られるというわけである。お体に気を付けて! 菅直人さんこそニッポンの象徴!