misima 漢詩分析・詩語検索機能について,簡易版を追加した。旧版は SQL を直接入力する形態だった。これは DB に蓄積しているすべての項目について,柔軟な検索ができるのだけれども,SQL 操作ということもあり,限定公開とした。簡易版はごく限られた条件指定しかできない。それでもこれくらいありゃいいか,ということでこちらは一般の漢詩作成者の方々のお役に立てればと思い,一般公開とする。旧版も expert 版ということで残してある。方式的には expert 版も簡易版も同じで,簡易版は SQL 組立ての JavaScript を追加しただけである。
開発・本番環境は FreeBSD 8.0-
ここで簡易版の使い方を簡単にしるしておく。misima 漢詩分析・詩語検索機能のコンセプト,実現方式については『misimaKansiServlet 漢詩 Chinese Verse 平仄音韻分析』,『DWR with Java: misima 漢詩詩語検索』を参照。
『misima 漢詩平仄音韻分析(Servlet版)』ページの「詩語検索」欄にある をクリックすると,別ウィンドウで検索画面が開く。検索はここで実行する。検索条件は図 1. に示す「平仄パターン」,「詩語」,「韻字」,「韻目」 を指定できる。
図 1. 検索条件
「平仄パターン」(A) は求める詩語の平仄の並びである。プルダウンで平仄を設定する。「○」は「平」,「●」は「仄」を意味する。初期表示では「○-○-○」,すなわち「平-平-平」の 3 文字詩語の条件になっている。もし 2 文字の詩語を求めたいなら,3 番目のプルダウンで「-」を選択しなければならない。
「○,●」いずれの場合も,検索結果に「◎」記号のものが含まれる。これは両韻を示す記号である。例えば,「思」という文字は意味によって「上平聲四支」と「仄去聲四寘」と平・仄どちらでも使用される可能性をもつ。もちろん詩語においてはどちらかに決まるのであるが,misima 平仄辞書で両韻のものは平・仄いずれの条件でもヒットするようになっている。だから当該詩語でその両韻文字がどちらの平仄で用いられているのか,辞書に当たって意味を確認する必要がある。
「詩語」(B) は指定した一文字を含む条件である。一文字しか指定できない。
「韻字」(C) 指定は詩語の末尾文字の条件である。押韻文字が決まっているときに用いる。
「韻目」(D) は「一東」などの韻目で検索するための指定である。押韻文字が決まっているとき,その韻目を含む詩語を閲覧したい場合などに用いる。韻目指定は面倒なので,ポップアップから選択するようになっている。「韻目」の入力エリアにカーソルが位置づけられると,入力メニューがポップアップされる(図 2.)。その一覧から検索したい韻目をクリックすると,入力エリアに韻目条件が設定され,メニューが消えるようになっている。
図 2. 韻目ポップアップメニュー
条件 (A) は必須である。かつ,(B),(C),(D) から少なくともひとつは条件指定をしなければならない。そして,検索は (A) and ([(B)] or [(C)] or [(D)]) ([ ] 内はひとつ以上必要) という条件で実行される。これは長大な検索結果を防ぐためである。簡易検索はこれ以外の条件指定はできない。
簡易版検索結果例を図 3. に示す。これは「●-○-○」の 3 文字でかつ韻字が「蒼」である詩語の検索条件である。
図 3. 簡易版検索結果例
詩語韻目は,「ニモニック:番号:韻目」の様式で出力される。ニモニックの意味は次の通りである。hk: 上平聲; hs: 下平聲; sj: 仄上聲; sk: 仄去聲; sn: 仄入聲。「hk:01:東」は「上平聲一東」を意味する。; (セミコロン) は当該文字が複数の韻目を有することを示している。A;B;C は A, B, C 三つの韻目を持つ文字であることを示す。対応する文字の区切りは - (ハイフン) で判断できる。
簡易版では,(A) and (B) and ((C) or (D)) などのような検索条件指定は不可である。こういう柔軟な条件設定は expert 検索でのみ可能である。expert 版の条件指定は,「実行 SQL」のテキストエリアに where 句の内容を直接コーディングする。検索キーはページにある通り,詩語: sg; 詩語平仄: hs1; 詩語韻目: in1; 押韻字: oj; 押韻字平仄 hs2; 押韻字韻: in2; 詩語字数: ss; 出典: ta が指定できる。expert 版の検索結果を図 4. に示す。
図 4. expert 版検索結果例
最後に参考文献を上げておく。
オライリー・ジャパン
Ajax の高度な活用集。詩語検索機能で利用した DWR についても,サンプル付で少し解説されている。しかし,addRows() 関数の仕様など,DB 検索結果表示に適したテクニックの解説までは望むべくもなく,少し自分の課題に応じた詳細事項は,やはり DWR サイトのドキュメントに当たらないと解決不可能である。
オライリーのクックブック・シリーズは困ったときに必ず役に立つ。本書で述べられている便利なライブラリもオライリーのサイトからダウンロードできる。
これは JavaScript のリファレンス本としてはいちばん優れていると思う。なんといっても,非同期通信オブジェクト,XML DOM オブジェクトについて整理されている。オライリーの『クイックリファレンス』よりも個人的には使いやすい。
※ 2011.12.23 付記
Spam が多いので misimaKansiServlet は限定公開としました。悪しからず。