娘が私の Mac でフランスのブルカ禁止法について調べていた。レポートを書かないといけないらしい。
昨年の半ばだったか,フランスでムスリム女性の特徴的衣装であるブルカを公的な場で着用することを禁止する法が成立した。NHK 解説委員のブログなどを見ると,その理由には「『政教分離』の原則などに照らして」だとか「イスラムの信仰よりもフランス的価値観を優先しなければならない」というものがあるらしい。「フランス的価値観」なんて「美しい日本」のような底の浅い臭いがします。
フランスは自由と平等の国というのは幻想であることはもともとわかっているのだけれども,それでもフランス人は個人の自由を論理でもって(悪く言えば理屈を捏ねて)主張するのがよいところでもある。そんなフランスで賛成多数でこの法案が可決されたというのだから驚く。宗教的かも知れない「属性」を「公的の場」に持ち込むことが「政教分離」に反するものなのか,なぜ禁止されなければならないのか,私は理解に苦しむ。十字架のペンダントも同じく禁止されているのだろうか。本当はどういう理屈なのか,知りたいものである。
私の目から見ると,これは一般大衆に定着してしまったイスラムへの反感の現れだとしか思われない。「美しい日本」が反中,反朝鮮半島でしかないのとまさに同じ。ぞっとしません。こんな法案が通るのが,スペインやロシア,テロ被害のあった英国ならまだしも,フランスとはね。フランスという国はもっと「理性的」な国だと思っていたんだけど,国内事情により排外的政策を取らざるをえない情勢になってきているらしい。ドイツ人からは「昔のオレたちとオンナじだ」と笑われているんじゃないだろうか。米国からは厳しく批判されている(アンタにだけは言われたくねぇと思うフランス人は多いんじゃなかろうか)。
学生時代まで私にとってフランスは憧れの文化国家であった。ま,映画『地下鉄のザジ』を観てからは,地下鉄がしょっちゅうストで止まっている楽しい国のイメージしかなくなってしまいました。この法案で反イスラムの独善国のイメージがくっついてしまった。フランスはいまそうとう酷い状況にあるようだ。イスラムの人々から反感を買うこんな法律は,フランスをいよいよ危険な事態に陥れると私は思う。でも,心あるフランス人はいる。理屈が通ることはきちんと認めることのできる尊敬すべき国民性をもつ。