日立製作所がレアアース再利用技術を開発し,2013 年をメドに本格的実用化を果たすと発表した(ロイター『日立がレアアース磁石のリサイクル技術開発,13年から本格稼動』)。
やっぱり日立はわが国を代表するメーカーなんである。10000 人の博士号取得技術者を抱えて「モノ作り命」の会社なんである。昨年 7000 億円もの赤字を計上して巨艦も沈みかけたかの感があったが,新幹線の英国・台湾への売り込み等,海外への事業展開を通して,また元気を取り戻しつつある。日本企業としては唯一のコングロマリット(複合企業体)であって,自社製品だけで社会インフラ(電力,産業用機械,交通機関,情報・通信,民生用電気機器,家電,高機能材料)すべてを提供することができる。たとえば,鉄道インフラが必要となれば,電気を生み出す発電所,それを送る送電施設,車両,信号から,線路を加工する機械,運行管理システム,発券システム,駅舎の電機設備,などなど,あらゆる要素を自社技術だけで実現できる組織力を有しているのである。ところが売り方がヘタクソなのか,グループ 10 兆円の売り上げに対して 1000 億円の利益も出ない,利益率 1% という信じられない経営を続けている。
電機メーカーというと,手近の家電のイメージが強いためか,ソニーや Panasonic ばかりが頭に浮かぶ人が多いと思う。けれども,コンピュータ用 HDD やネオジム磁石など,目に留まらないところでの基盤製品ではトップシェアのメーカーである。コンピュータについてもプロセッサとオペレーティングシステム,データベースマネージャ,ネットワーク機構をセットで自社開発することのできる数少ないメーカーである。なのに,どうも縁の下の力持ちに徹するあまり,実入りの悪い商売から抜け切れない体質のようである。なにしろ,何千億もの価格で受注した発電所インフラについて,タービンの故障で逆に何千億もの賠償金を電力会社に支払わされる,そんな商売が好きなんである。デジタルビデオカメラを他社に先駆けて製品化したのに,世の人はソニー,Victor か Panasonic の製品しか知らない。このレアアース再利用技術も,特許ロイヤルティについては別として,実用化の暁には,日立はおいしいところを売り方の上手なメーカーに持って行かれるだろう。それが目に見えるようである。
このレアアース再利用のように,日立の開発した基盤技術が話題になるのはじつは珍しくない。それでも,レアアース禁輸のような日本を震撼させた中国の強請外交が大いに話題になるこのいま,日立はさすがにタイムリーにやってくれました,と頼もしくなってしまうわけである。ヤクザの強請に技術をもってスマートに対抗する。これこそ技術立国日本の「成熟した」姿というものである。
こう思うにつけても,中国の軍事的脅威に「核武装せよ」などとアタマの悪いことを叫んでいるバカ右翼連中なんぞは,日本の進むべき道が何かを真剣には考えていないな,と私はまったく呆れ果ててしまう。日本が核開発を表明したとたんに,真っ先に米国を怒らせ — いったい誰が自分の飼っている犬に,暴発したら我が身をも危うくする危険物を持たせたがるだろうか —,ウランどころか海外からのあらゆる資源提供の途が絶たれて,日本が兵糧攻めに見舞われるだろうことが,こいつらにはわからないらしい。戯言を言ってないで,日立の技術者のように,手を動かして,智慧を絞って世の中のために働けというのである。