確定拠出年金

私の会社の退職金制度は,2001 年から,退職金の積み立ての一部を個人投資で運用させる「確定拠出年金」という仕組みになっている。この場合,積立金に対して非課税なので,その分だけ有利ということらしい。しかし退職後に手にする金を増やすも減らすも個人の責任ということなんである。この制度に変わるとき結構大騒ぎで説明会が開かれたが,私はというと,殺人的多忙のなかにあって,半分いねむりをしながらファイナンシャルプランナーの話を聞き,運用商品をテキトーに選択したままであった。そして,この 10 年間放置していたのである。その運用報告書に一度もまじめに目を通したことがなかった。

たまたま会社で確定拠出年金セミナーが開かれたので出席してみた。いま現在,日本人の平均寿命からの試算によれば,定年退職後,つまり老後に必要なカネは夫婦二人でざっと 8,000 万円もかかるという。おまけにこの老齢者社会のおかげで,65 歳から仮に年金を受け取ったとしても,この数値には 3,000 万近くも足りないらしい。その穴を退職金その他の資産で埋めなければならない。この考えてみれば当たり前のような説明を受け,この期に及んでちょっと不安になって来た。同じような説明を 2001 年にもしてくれたはずだけど,どうも私はいねむりしていたらしい。「その他の資産」— これこそ確定拠出年金の運用利回りによって天と地の違いが出て来るわけで(1, 2% の違いが 60 歳定年後に受け取る金額として数百万の差で跳ね返って来るのは,家のローンを考えればすぐわかる),いままでの己の暢気ぶりが情けなく思われて来たのである。

家に帰ってすぐさま,いまの私の運用状況を確認した。委託先銀行の自分の口座番号だけでなく,パスワードすら忘れ果てている体たらく。PC の会社用パスワード管理ファイル(その対象システムは,手足 20 本の指でもとても足りないくらい,数があるのだ)を探しまくって,ようやくそれを見つけた。当然のごとく元本割れしていた。う,もっと早く気付くべきだった。

運用商品投資の初期設定では,2001 年当時のバブル崩壊後の構造不況感が強かったので,日本の株式,国債には目もくれず,しかも元本割れを絶対起こさない定期預金系については,面白みがないとまったく選択しないでいた。つまり,私は外国株式と外国国債に全額投資していたのである。2008 年のリーマンショックで株式が大暴落したのは記憶に新しい。外国国債は堅調に推移しているが,やはりここのところの円高の影響で為替損失が相当出たに違いない。それでも株と国債に分散しておいたので,大損はしなかったようである。景気で株は乱高下がある。一方,不景気になると国債は金利が下がって株価とは逆に値段が上がるので,円高で目減りしたとはいえ株価の損失を幾許かカバーしていたようである。ま,そんなこんなでマイナス 1.4% の元本割れというわけである。

運用資金の振り分けを変えることにした。外国株式と外国国債だけじゃ危ないと思った。ここのところ再び 10,000 円台を回復した日本株式と,増える一方でいつ破綻するかと騒がれつつも海外投資家の信用がいたく高いわが国の国債とに,一部を振り替えた。これからは,一年に一遍くらいは世の中の動向を見て,少しは運用方法を考えなくちゃ。ま,また忘れて放置してしまうのが目に見えるようだけど。

私はまったくケイザイがわからず,投資にもまったく興味がない。それでも,委託先銀行がくれた,1985 年以降の日本株式,日本国債,外国株式,外国国債の価格の推移資料を見ると,外国株の乱高下が凄まじいのに比べ,日本株式は 1991 年以降上り下がりしつつも確実に下降している様が如実にわかり,これじゃ海外投資家も日本に見切りを付けたくなるよな,と情けなくなってしまった。政府はさっさと FTA を締結して日本の主要産業の国際競争力を高めないと,韓国,中国に叩き潰されちまうぞ!