最近,わが家では「ぷなぁ」という幼児語のようなコトバが流行っている。ちょっと驚いたときに「ぷなぁ,ぷなぁ」と発して,愚かしいんである。これは,朱川湊人『水銀虫』のある短編に登場する弱々しい怪物が,弱いものいじめを本性とする少年たちの手にかかって殺されるときの叫び声である。ぞっとしません。
日本シリーズ・中日 VS ロッテは,さすがに素晴らしい試合が続いている。近年稀に見る好カードになっているのではなかろうか。ところが,全試合中継も,地上波テレビの放送もない。中継があればあったで,早慶戦よりも低い視聴率。どうも盛り上がっているのは千葉と名古屋だけのようである。いったいどうなっているんでしょうか。勝つべき人気チームが勝てないスポーツは,見せ物としてはこうなるのか知らん。不景気を絵に描いたような有様である。それにしたって,野球のいったいどこをファンが観ているのかさっぱりわかりません。
話題の検察スキャンダルに関して,柳田稔法相の肝いりで「検察の在り方検討会議」が設置される。その委員 15 人が決まったとのニュースを観た。なかなかユニークな人選でちょっとその行方に興味が湧いて来る。ところが。座長がなんと元法務大臣の千葉景子さん。この名を見た瞬間に,検討会議が菅政権のただのポーズに思われて来たんである。いろいろ示唆的な結論が出たとしても,放置されるのが目に見えるようである。
参議院であんなに偉そうに取調べ可視化法案を要求して参院可決させ,死刑制度への疑問を宣っていたくせに,法務大臣になった瞬間にその可視化法案をお蔵入りに近い状態に放置し,まったく何もできなかった千葉景子さん。死刑執行命令にハンコを付いた千葉景子さん。そりゃ,大臣ともなりゃ,過去の政策や官僚のしがらみで自由に身動きができないことはわかっています。それにしても何もしなかった。ま,「時効撤廃」をやりましたけどねぇ。切れ味鋭い権力を手にしてビビって尻込みしてしまう優しい人だったんだと思う(ビビる前に一人くらい言うことを聞かないやつを刺したらどうかねと思っていたら,死刑囚を二人ばかり吊り下げてくれた。どういう神経してるんだろうか,この人)。でも,官僚に対して鬼になれない政治家なんて,国家を不幸にする元凶ではなかろうか。アンタ,選挙で選ばれたんですよ。いまから考えると,千葉さんこそがいまの菅政権の不作為体質を体現していたわけである。だから,先きの参院選で落とされた。国民の選択はホント,シビアなんだと今更ながら感心する。民主党は,現職閣僚だった千葉景子が無惨な敗北を喫したことを,もっと象徴的に,重大に捉えるべきである。なのに,そんな人をいまだに政府の諮問検討会議の取纏めに据えている。優しい人たち。
もうひとつ。この「検察の在り方検討会議」に対して私がどうも期待をもてないのは,検察の制度の問題もあるかも知れないけれども,その尻馬に乗ってあることないことを書き立てる大新聞の無責任体質こそが,じつは最大の問題,日本の政治風土が高められないガンではなかろうかと思うからである。
そうはいっても,委員には,オウム・ウォッチャーとしてかつて引っ張りだこだった江川紹子さん(この人の問題意識には敬服させられることが多い)や,小沢さん疑惑を巡って公設秘書/石川議員逮捕に踏み切った検察特捜部に対し実に見識の高い批判を加えた郷原信郎さんが名を連ねていて,少しは実のある議論がなされるような気もする。「ニコニコ動画」あたりがこの会議内容を放映してくれないかと期待しているんである。
ぷなぁ,ぷなぁ。