ロシアの Ozon から本が届く。Успенский Б. А. Семиотика искусства. М.: Школа «Языки русской культуры», 1995. B. A. ウスペンスキイ『芸術の記号学』,モスクワ,1995 年。ロシアの記号学者ボリス・ウスペンスキイの代表的論考『構成の詩学』,『イコンの記号学』その他を収録する論文集である。本書の版元・「ロシア文化の諸言語」学派出版は,ロートマン,トポロフ,パンチェンコ,ウスペンスキイといったロシア記号学を代表する有名な学者の論文集を多数出版していることで知られている。とりあえずは積ん読状態か。
参院選に落選しながら留任した法相千葉景子が,これまで認可しなかった死刑執行を,2 死刑囚について認可したことが話題になっている。この人の信念とはなんだったのだろうか。私の不信感は,ただそれだけ。千葉さんは執行に立ち会ったというのだから,この態度は認めてもよいと思う。そうそう,もうひとつ疑問がある。テレビドラマなんかで,死刑囚がキリスト教の神父なり牧師なりから説教される執行直前のシーンをよく目にする。これが実際運用の姿であるとすると,なぜにキリスト教なんだろうか,とずっと疑問なんである。千葉景子さん,教えてくれませんか?
『政府・与党,死刑執行『適正な判断』=野党,落選法相を批判』をみる限り,千葉法相を批判する声がかしましいらしい。「国民にノーと言われた人が死刑執行のはんこを押した」と川崎二郎自民党国対委員長は人道を装った批判をしている。べつに国務大臣は国会議員である必要はないのだから,「国民にノーと言われた」かどうかなんてことは法的根拠をまったく欠いている。もちろん,死刑囚を死刑にすることにどこにも法的問題はない。説明責任? アホか。「批判のための批判」であることがこれでわかる。それより,「あなたは法務大臣らしく国家権力で二人の死刑囚の死刑執行を命令しましたね」と誉めてあげたほうが,よっぽど相手は堪えるのではないだろうか。
ArabTeX ヘブライ語,Babel ヘブライ語について調べていたなかで,cjhebrew ヘブライ語パッケージについて知るところとなった。cjhebrew は,右から左へ向かう書字組版のための e-TeX TeX--XeT エンジンを必要とする。cjhebrew パッケージは ptexlive なら初期導入されている。
簡単な使い方を示す。\usepackage{cjhebrew} をプリアンブルに書いておく。\cjRL{AB} 命令はヘブライ語テキストを BA(右→左)で出力する。\cjLR{AB} 命令は,AB(左→右)で出力する。cjhebrew 環境は,環境内のヘブライ語テキストを右→左方向で出力する。ヘブライ語は,アスキーコードで記述する。母音点記(nikud)も可能なところが素晴らしい。聖書学でヘブライ語を扱う学徒にとって,母音点記を表現できないと使い物にならないのではないだろうか。cjhebrew 入力方法の対応表を以下にマニュアルから引用しておく。詳細は cjhebrew マニュアルを参照(ptexlive なら texdoc cjhebrew とすると PDF マニュアルが閲覧できる)。

cjhebrew は,日本語混在でも問題なく使用できる。Babel Hebrew UTF-8 の日本語混在では不可能な母音点記も可能である。日本語と同時に用いる場合は eplatex でコンパイルしなければならない。日本語 pLaTeX2e でもこういうことができるようになったのだ。e-pTeX を開発してくれた北川さんには本当に感謝したい。cjhebrew ヘブライ語を日本語,ロシア語,ギリシア語と併用した例を以下に示す。ヘブライ語は旧約聖書・創世記の冒頭テキスト(nikud 付)である。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 | % -*- coding: utf-8; -*- % eplatex --kanji=utf8 \documentclass [a4paper]{jsarticle} \usepackage [T1]{fontenc} \usepackage [utf8x]{inputenc} % \usepackage [polutonikogreek,russian,japanese]{babel} \usepackage {cjhebrew} % \pagestyle {empty} \setlength { \textwidth }{240pt} % \begin {document} \parindent =0pt \selectlanguage {japanese} { \large ヘブライ語Cjhebrew試験} \vspace {1em} \begin {cjhebrew} b*:re'+siyt b*ArA' 'E:lohiym 'et ha+s*Amayim w:'et hA'ArE.s; w:hA'ArE.s hAy:tAh tohU wAbohU w:.ho+sEk: `al--p*:ney t:hOm w:rU/a.h 'E:lohiym m:ra.hEpEt `al--p*:ney ham*Ayim; \end {cjhebrew} \hfill (創世記 1:1) \vspace {1em} \selectlanguage {russian} \noindent Ты проходишь без улыбки, \ \ Опустившая ресницы, \ \ И во мраке над собором \ \ Золотятся купола. \ \ \hfill { \it Александр Блок} \vspace {1em} \selectlanguage {polutonikogreek} Ἄνδρα μοι ἔννεπε, Μοῦσα, πολύτροπον, ὃς μάλα πολλὰ \ \ πλάγχθη, ἐπεὶ Τροίης ἱερόν πτολίεθρον ἔπερσε. \ \ πολλῶν δ'' ἀνθρώπων ἴδεν ἄστεα καὶ νόον ἔγνω, \ \ πολλὰ δ'' ὅ γ᾽ἐν πόντῳ πάθεν ἄλγεα ὃν κατὰ θῡμόν, \ \ ἀρνύμενος ἥν τε ψῡχὴν καὶ νόστον ἑταίρων. \ \ ἀλλ'' οὐδ'' ὧς ἑτάρους ἐρρύσατο, ἱέμενός περ; \ \ \hfill { \it Ὅμηρος} \end {document} |
この組版結果は次のとおり。原稿: cjheb.tex,PDF: cjheb.pdf も置いておく。
