IMCO が壊れた。今度は ZIPPO にした。じつは大学三年生のころ,ZIPPO 50 周年記念のレプリカが売りに出ていて— 札幌大通りの『4丁目プラザ』だった —,私は真鍮・金メッキの一品を購入し,愛用していた。社会人になりむちゃくちゃな労働生活の挙句に肺病になり入院したその日に,ハイライトの吸いさしとこの ZIPPO を妻に取上げられた。それから引っ越しやらを経るうちに,20 年近く使い込んで渋く変色したこのお気に入りライターを,自宅のどこかに眠らせたまま探し出せないでいた。いまふたたび同じ 1932 年レプリカを手に入れた。エッジの二本線が特徴である。
お店に依頼して,文字を彫金してもらった。"fluctuat nec mergitur" というラテン語を Roman 体で入れてもらった。『漂えど沈まず』という意味の格言である。昔,『週刊プレイボーイ』に開高健が人生相談のような連載をしていた。そこで,開高健の好きなことばとしてこの名句がしるされているのを読んだ。パリ市の紋章にもこれが印字されているそうである。時代のなかで翻弄され漂うように不安定ながらも沈んでしまうことはない,そのように生きよ,というメッセージであろう。開高健を尊敬する私にとって,爾来,このラテン語の格言は,彼が残してくれたことばと等価になった。
奥村先生のサイト TeX Forum で,『美文書』第 5 版 p.373 にある ptexenc フィルタの Perl コードの問題点の指摘があった。これは私が自分用に使っていたのを,Unicode と pTeX に関する節に参考として掲載したものだ。このプログラムに,utf8::decode 関数を,binmode 関数で UTF-8 として入力したテキストに対して発行すると,『二重デコード』されてしまうバグがあった。こういうことを見逃さずきちんと検討して,すぐ教えてくれる凄い読者がいる。そして忌憚なく語れる場がある。これこそ LaTeX コミュニティの凄さだと思った。
自分なりに納得の行く見直しをして,『[改訂第5版]LaTeX2e 美文書作成入門・付録I『LaTeX2e による多言語処理』サポートページ』に訂正版をアップした。ついでに Utf82TeX も同じバグを抱えていたので訂正した。こちらは折角なので,<utf82tex_n> 無変換指定タグサポートを追加し,swath タイ語ワードブレイカー 0.3.4 以降への対応に変更した。