学期末試験

今夜私が仕事から帰宅したとき,「あー試験終わったー」と高校一年生の娘がほっと一息ついていた。私も休みの日に,数学の順列・組合せ,二次関数・二次方程式を教えてやったりした。二項定理をいまは順列・組合せの単元で教えるのに驚く。私が高校生だったころは数学ⅡB・数列のセクションでであったはず。二次方程式の解の一般公式がどうして得られるのか示してやったら,そんなの教えてもらってないと娘に感心された。「んなわけねーだろ,お前。でも,高校生くらいの数学レベルなら,まだお父さんは錆び付いてないゾ。お父さんは共通一次試験,そう,いまのセンター試験で,数学はほとんど 100 点だったんだゾ」と自画自賛(当時の共通一次試験・数学は満点が 200 点だったことは伏せておいた)。二次方程式の判別式 D の効用を教えてやったのがピタリと試験問題に嵌ったらしく,私はいたく感謝されたんである。いまの高校生は数学Iと数学Aを別々に試験されるらしい。カワイソ。

「情報」の試験の自己採点に付き合わされた。「お父さん,プロでしょ?」と迫られた。たいていは,しごく簡単な問題である。一方で「Microsoft Excel 2007 で Visual Basic はどのメニュー・タブに配置されているか」などという,私にはとても答えられない問いがあった。なんで一 IT 企業でしかない Microsoft が勝手に決めた仕様を学校で「教える」必要があるのか。このような「そんなこと聞いてどうすんの?」というようなくだらない問題が結構あった。情報と個人情報保護・著作権との関わりを問うよい質問も,もちろん,あった。

時事問題もいくつかあった。「情報」の現在への生徒のアンテナの張り具合を試していて興味深かった。個人情報の公開をもとにユスリをした廉で今年5月に逮捕者が出た「ロマンシング」詐欺事件,日産自動車の工場が半導体部品不足のために生産をストップしてしまったニュース,iPhone4 iOS4 の Microsoft Exchange 連携での不具合,ゆうちょ銀行のシステムダウンによる混乱など,ホットな IT ニュースに関る設問があった。うちの会社のヘマで起きた恥ずかしい障害の話題もあった。ええ,こんなことまで試験に出んの? クラウドコンピューティングでマイクロソフトと提携したコンピュータメーカーはどこかという主旨の問題があった。「答えはマル4の富士通なんだろうけど,でもこの問題文,『クラウド』のところが『グランド』になってるなー。問いに間違いがあったよって先生に言っとけ」。

娘はソニーと答えたらしい。「ソニーはとてもコンピュータメーカーなんて呼べる会社じゃねー。ただの趣味家電メーカーじゃ。要するに『情報』の最前線に貢献するような何もできやしないのさ。覚えとけ! お父さんはなあ,VAIO(※)か Panasonic のパソコンを使っている人をみると『素人! ミーハー!』と考える勝手な人間なんじゃ」と私。もちろん,これは言い過ぎであって,ここにはうちの会社の何倍もの株価を誇るこの世界的超優良企業に対する私のやっかみ(と,社会インフラになりえない企業への憐れみ,そして,愛社精神)がある。

(※)私は昔,ある事情で VAIO を分解したことがある。その作りがまさにウォークマンのパソコン版だと知り,驚愕した。うちの会社の製造するパソコン(「パーソナル・ワークステーション」などと称していた)は,絶縁シールドや配線部材など,「電子計算機」としてあるべき姿を追及し,凝りに凝っていた結果高価になってしまい,見事に競争に敗れてしまった。その VAIO がいかにスカスカ構造の粗悪計算機だと私には思われたとはいえ,普通のパンピー・ユーザーが保証期間内で普通に使うには十分な品質を備えた製品であったことには間違いがなく,ソニーのブランド力とユーザーにとっての機能充分性に支えられた製品開発ポリシーに,私は舌を巻いたのである。売れるが勝ち。でもねぇ。