土曜日,第 53 回神奈川県合唱祭に行って来た。場所は横浜桜木町にある神奈川県立音楽堂。娘の所属する高校合唱部が出演した。中学・高校部門から大学,社会人部門まで,ほぼまる一日,演目があった。
娘は朝から出かけた。新川崎駅から桜木町駅への行き方を教えてやった。でも,横浜駅で根岸線に乗り換えて関内,桜木町と二駅目だと勘違いしてしまい,私はウソを娘にインプットしてしまった。案の定,方向音痴の娘は目的とする駅ではなく「二番目」が頭にあったらしい。幸いにも桜木町行きの電車に乗り合わせたので乗り過ごしせずにすんだようである。まったく,自分で判断をしつつ行動しろというのだ。
娘は 3 回くらい舞台に立つという話だったが,私と妻は最後のメイン演目,この日のトリに合わせて音楽堂に入った。曲目は,ジョスカン・デ・プレ作曲 "Gloria" と,ウィテカー作曲 "Hope, Faith, Life, Love" だった。線のきっちり出た,混声四部らしい,よい演奏だった。
桜木町は二年ぶりくらいか。紅葉坂沿いに横浜らしい瀟洒な洋食レストランやマンションが立ち並んでいる。県立音楽堂はクイケン兄弟によるバッハ『音楽の捧げもの』演奏会以来である。この音楽堂は,建物正面の安手の駐車場さえなければ,クラシックの旧き良き殿堂の風格がある。名だたる演奏家がここでコンサートを開いている。娘はこの県立音楽堂のほかミューザ川崎コンサートホールの舞台にも立った。神奈川県の最高のコンサートホールで演奏したわけである。客席からしか眺めることのできない私には,娘が貴重な経験をさせてもらっているということがありがたい。娘はまったく頓着がないのだが。合唱祭のあと,みなとみらいのランドマークタワー辺りに足を運び,横浜駅地下街で三人で中華料理を食って帰宅した。
桜木町駅前で妻が『モモコ』なる風俗嬢求人雑誌を手渡された。「まだアタシ,こういうの配られるくらい若く見えるんだワ」とまんざらでもなさそうであった。趣味の世界なので 60 歳の風俗嬢も探せばいるはずである。「不況なんて関係ない♥」と『モモコ』表紙にある。このご時世,就職先が見つからず風俗嬢やパーツモデルになる女子大新卒女性も多いらしい。ピアノでバッハを弾くヘルス嬢なんてのも珍しくないのかも知れない。
私もちょっと拝見。『モモコ』では「日給 35,000 円以上・超楽チン・手だけで高収入」などといった求人触れ込みがパターン化していて面白い。とくに「脱がない舐めない触らせない」という三原則がしばしば目について,大笑いした。うちの娘も,どうにも仕事の行先を見出せずこの手の道を歩む,ということを想像してみる。笑えないことがわかる。そして,そういう仕事も仕事なのだと,改めて考えてみる。小沢昭一的こころ。私は風俗業そのものには何の先入観もないつもりである一方,なによりヤクザやアジアン・マフィヤに食い物にされる極道であることにこそ,業界の悪を見る。いま大騒ぎの角界の野球賭博問題が,賭博行為そのものよりもヤクザとの関係をこそ問題視されるべき,と考えるのと同じである。
ところで,妻は柴藤ももえ作の掌編マンガ『フーゾク小悪魔道』〜「素股」編(2)を見て大笑いしていた。「素股」って何だって? ここでその意味を書くのはやめておきます。